君の人生、変えてあげる。 138
…さすがにそこまでは知らない。
「く、詳しいんですね…」
「テレビやインターネットで知っただけですけどね」
意外な趣味を持っているのかもしれない。
昨日はあまり話すことができなかったが、しばらくの間会話は盛り上がった。
そうしているうちに、他の皆もやってきて、朝食のメニューも並べられる。
パン、オムレツ、ソーセージ、サラダ……と、特別なものではないが、普段の朝食を考えるとやはり豪華と言えた。
最後に聡美さんが着席して、食べ始める。
「よく眠れた?」
「はい、おかげさまで」
「そうだ、たっくん、自転車はたっくんの家においた方がいいよね」
茉莉菜ちゃんが言う。そうだ、自転車で出発していたんだ。
「その方がいいけど、できるの?」
「運転手に頼んで持って行ってもらえばいいから」
…なんか次元の違う話だ。でも、そうしてもらえるのならありがたい。
「じゃあ、そうしてもらえば…」
「うん、頼んでおくね」
茉莉菜ちゃんがそう言って、朝食に戻る。
朝食を食べ終わり、そろそろ失礼することになった。
「困ったことがあったらいつでも相談してね」
聡美さんはそう言ってくださり、茉莉菜ちゃんは玄関で僕の手を握り、
「また、いつでも来てね」
と言って見送った。
5人はここに来たときの車に乗った。
僕は直接駅に行くのだが、泊まると思っていなかったからいくつか気になることはある。
Tシャツとかは洗ってもらってあるからいいが、一つだけ、トランクスは穿いていたので昨日のままだ。
スマホの電池がもつかどうかも心配だ。
律ちゃんから借りた海パンも、洗って返すのだが、まだ濡れたまま持っている。
まあ、気にしなければいいことなのだろうけど…
海パンは返すのが遅れても数日、スマホも極力使うのを避ければ…大丈夫なはずだ。
車は駅に着いた。
「じゃあね、たっくん」
家に帰るのであろう残りの四人に声をかけられ、僕は手を振って車を降りた。