君の人生、変えてあげる。 122
…そうとしか言えない。この状況では。
飛鳥ちゃんが『私を選んでくれたら』と以前言われたことがあったけど、ここにいる5人も、他のみんなも、素敵で、魅力があって、今の時点では誰か一人なんてとても…
「ふふっ、ごめんね。今ここで聞くようなことじゃなかったかな」
聡美さんがニコッと笑って言う。
そのあとも、みんなでいろいろ話をしながら、ディナーは進み、メインの肉料理、デザート、コーヒーまたは紅茶(僕はコーヒーにした)と続いて、終わった。
「みんな、今日、泊まっていってよ」
茉莉菜ちゃんが明るく言った。
僕は戸惑った。明日の予定がある。
「あの、ごめん、明日、予定があるのだけど…」
「何時までにどこに行くの?」
茉莉菜ちゃんに明日の朝、駅前に集合すること、歩ちゃんたち文芸部一同と一緒のことを告げる。
「へぇ、そっかぁ」
ふんふんと頷く茉莉菜ちゃん。
「だったら、今夜は家に泊まって、明日の朝駅まで送ると頼んでおこうか」
「なんか申し訳ないなぁ」
「いいよ、こっちも突然誘っちゃったんだし」
茉莉菜ちゃんは舌を出して照れくさく笑う。
結局、お言葉に甘えて、泊まっていくことにした。
他の人も、一人も欠けることなく、留まった。
「では、皆様をお泊まりいただくお部屋にご案内致します」
「あの、すみません、お風呂の部屋に、戻っていいですか?荷物取りに行こうと思って…」
葵ちゃんが、メイドさんの言葉に、おずおずとそう言った。
「皆様のお荷物は、茉莉菜お嬢様の部屋にまとめてありますので、ご安心ください」
「みんな、部屋分かったら、私の部屋に来て」
茉莉菜ちゃんがそう付け加えて、僕たちは動き始めた。
メイドさんに案内され、それぞれの部屋番号を確認する。
どうやら泊まる部屋は一人ずつのようだ。
…それだけたくさんの部屋がある、って考えるとなんだかすごい。
『108 酒本拓真 様』
きちんとルームプレートまで用意されてある。
中を少しだけ覗くと、ホテルの部屋のような綺麗な感じがした。
家具とベッドと、いたってシンプルだった。
それぞれ部屋を確認して、茉莉菜ちゃんの部屋へと向かう。