君の人生、変えてあげる。 121
「さあ、お食事、頂きましょう」
聡美さんは、もっとも入り口から遠い、僕がいる席からは斜め前に、座った。
「いただきます」
茉莉菜ちゃんがそう言って頭を下げたことに、僕たち、聡美さんが続き、夕食が始まる。
あ、夕食いらない、って家に連絡しないと。
「あの、スマホを取りにいきたいのですが…家に連絡ししようと思って」
「真央にはこちらから連絡しておいた」
聡美さんはそう言ったあと、さっきの話に戻った。
「…そう、さっきの続きだけど、少しでも真央の力になれたら、と、思って。だから、早い方がいいと思って、いろいろ準備できてないところもあったけど、来てもらうことにしたの。準備できてないところで、迷惑かけたかな?」
「あ、いえ…多少戸惑ったところはありましたけど、クラスのみんなのおかげで、うまくやってます」
「そう…それなら良かった。私たちも、サポートできるよう頑張るから」
「ありがとうございます」
聡美さんとの話もそこそこに、僕も食事を楽しむことにする。
一皿目を食べ終わり、二皿目が運ばれてくる。
説明がつき、レストランに来ているみたいだ。
「いつもこんなすごい食事なの?」
葵ちゃんの問いに茉莉菜ちゃんは
「お客さんが来たときだけだよ」
しんとしているわけではなく、なごやな雰囲気になってくる。僕もだんだん緊張が解けてきた。
「拓真くん、生徒会本部 役員に立候補するんだって」
聡美さんは再び僕の方を見て言った。
「はい。うまく行くかどうかは、わからないのですが…」
僕は、まだあまりまとめていなかったが、気になっていることを切り出した。
「あの、共学になるのに反対する人のために、女子クラスを作っていただくようお願いする、という案を、考えているのですが…」
聡美さんはにっこり笑った。
「ええ、その話は、少し聞いているよ…私たちも、多くの人が、それで納得する、ということなら、そういう形の提案、歓迎よ」
「あ、ありがとうございます」
「元はといえばこちらが不完全な状況で拓真くんを迎え入れたのが問題だったのよね…教職員や学校法人側でも反対の声はあったの。みんなからそういう案が出るのは嬉しいよ」
聡美さんが言った。
「そういう話もいいけど…」
聡美さんは微笑んで
「拓真くんは涼星に来て、気になる女の子は見つかった?」
空気が止まったような気がした。
他の5人が、一斉にこちらに注意を向けた感じがした。
「ええと…」
他の人の息を飲む音が聞こえてきそうだ。
「…みなさん…茉莉菜さんをはじめ…素敵な人ばかりで…誰かが気になる、ということは…」