君の人生、変えてあげる。 12
運動することにおいて心配はないけれど、相手が女の子というのでは緊張の度合いが全然違う。
今隣を歩いている沙羅ちゃんなんかは、僕よりも背が高かったりする。
他にもそういう子は何人かいたような気がする。
体格のいい子は、やはり運動能力も高いんだろうな…
―教室に戻って、貰った体操服一式をカバンの中にしまう。
明日は体力測定か。
6時間目開始のチャイムが鳴る。
6時間目はHRで、先ほど言っていた宿泊研修の部屋割りの見直しを行うという。
黒板の前に立つのは、深沢先生ではなくクラス委員長の飛鳥ちゃんだ。
深沢先生は後ろの方に座って見守っている。
「では、転校生、酒本君、が来たことで、宿泊研修の部屋割を見直す件ですが、まず、酒本君を男子一人の部屋、でなく、女子と一緒の部屋に入ってもらう、ということに異議ははありませんか……異議なしと認めます」
やはり、会議を進めるとなるとそれなりにお堅い雰囲気。
飛鳥ちゃんは続けた。
「続いて、班別行動の班も連動して見直すこと、そして、班を決めるやり方は、先日決めたのと同じ、班長がメンバーを取る方法で異議はありませんか……そして、班長5人を選び直す必要はないですか……はい。では、選ばれている班長5人は…多分もう考えていると思うので、あと5分でメンバーの希望を書いてください。他の人は、今から配る資料を読んで、班別行動で行きたいところを考えておいてください」
宿泊施設とその周りの資料が回ってきた。
高原の湖畔、というだけではよくわからなかったが、読むと、いくつかのハイキングコースとか、軽い山登りとか、遊園地みたいなところとか、美術館とか、いろいろな体験コースとか、さまざまなものがあるようだった。
「では、各班長、希望を出してください…順不同に、立川沙羅さん、千葉胡桃さん、山岸歩さん…」
このクラスの合計人数は、班長5人、飛鳥ちゃん、それに僕を含めて32人。
大体6〜7人の班が五つできる。
沙羅ちゃん・胡桃ちゃん・歩ちゃんの3人は班長なんだ…
班長5人が希望の班員メンバーの書かれた紙を飛鳥ちゃんに渡す。
どうやら飛鳥ちゃんも班長のようで一緒に紙を出した。
もう一人も出し終えたところで飛鳥ちゃんがまとめて確認する。
「…全ての班が酒本くんの名前を書いちゃってる」
飛鳥ちゃんが苦笑いした。
「では、班長さん、前に来てください」
飛鳥ちゃんは、自分以外の4人の班長を呼んだ。
5人が協議している。
「ねえ、たっくん、この高原行ったことある?」
隣の席の茉莉菜ちゃんが声をかけてきた。
「まだないな」
「私も。楽しみだね」
「うん」
僕からも聞いてみた。
「茉莉菜ちゃんはどこの班?」
「うーん、前回アスちゃんの班だったから今回もそうだと思う」
「たっくん、ちょっと」
話していると、いつの間にか、飛鳥ちゃんが目の前に来ていた。
「ちょっと…来てくれる?」
僕は飛鳥ちゃんに連れられて前へ、何か、まるで尋問されるみたいでちょっと緊張する。
「たっくん…誰の班に入りたい?他のメンバーは、微調整はあるかもだけど、だいたいこの紙のとおりね」