君の人生、変えてあげる。 102
市民プール?
…ああ、そういえばあったなぁ。
「最近は行ってないかも。多分、小学生か中学生のときが最後だったかな」
「それなら…たっくん、土曜日空いてる?」
「うん、別に用事はないけど」
「なら、律たちと一緒に行こうと思ってたんだ、たっくんもどう?」
市民プールは、最近拡張されたような話を思い出した。
市長選挙(もちろん未成年の僕は投票権なかったが)の一つの争点として「税金で市民プールの拡張は必要か?」のようなことを言った対立候補が敗れた後、市民プールにしては割と豪華目に拡張された、ということだった。
それはともかくとして、行くかどうかだ。
もちろん、楽しそうな話、躊躇する理由はない。
「うん、行くよ。誘ってくれてありがとう」
そう言いながら、僕はこれから使う海パンを取り出した。
「この海パンしか持ってないけど、大丈夫かな」
「まあ別に問題ないと思うよ」
そこに口を挟んだのは律ちゃんだ。
「兄貴が使っててもう穿かない海パン貸してあげようか?学校の奴よりずっとカッコいいからさ」
「えっ、いいの?」
「いいよ。兄貴は遠くの大学に行ってて聞くまでもないから」
「そうなんだ」
海パンの話はひとまず置いて、胡桃ちゃんにもう一度聞く。
「胡桃ちゃんと律ちゃんと、後は誰が来るの?」
「茉莉菜と奈緒。あと、隣のクラスの子が一人」
「隣の…?」
「私の幼馴染、みたいなヤツ。たっくんのことずっと興味があって、頻りに会ってみたいって言うもんだから」
「美術選択の人?」
それなら、同じ教室で会っているはず。
「音楽選択。でも、隣のクラスだから、多分たっくんも顔は見たことあると思う」
胡桃ちゃんは水着を着ながらそう言った。
僕もそろそろ海パンを穿く。
そして、市民プールへは、明日、現地集合と決まった。
一時間目の水泳。今まで以上に和気あいあいの雰囲気になり、菜々子先生も安心したようだった。
菜々子先生も一連の話は知っていたようで、僕に軽く
「着替えの問題、解決したのね」
と言ってきた。
「ええ」
僕も明るくそう返した。
水泳の授業が終わってまた更衣室へ。
「たっくん、週末空いてる?」
着替えながら歩ちゃんが聞いてきた。