生徒会日和。 89
「お二人さんにはその代わりに別のオプションを設けるから安心して」
…なんですと
「本当ですか?」
「ありがとうございますっ!!!」
目をキラキラさせて喜ぶ双子。
…背中に寒気を覚えたのは気のせいでしょうか。
「さて、残りの6人で、平等に決めましょう」
真希さんがテーブルに6枚の紙を並べる。
「この中に1枚、当たりがあります。その当たりを引いた人が、樹くんと同部屋になれます」
「あの、質問なのですが」
「何?」
蜜恵さんが挙手してこう言った。
「“1日目はどこ、2日目はどこ”というような解決方法は、ダメなのでしょうか?」
そういえば、あの小説にもそれと類似のシーンがあったような気がする…
「それもそうね。これだけ希望者がいるなら日毎に決めてもいいかもしれない」
蜜恵さんの提案を受けて、真希さんも頷く。
「じゃあ、今日樹くんと同部屋になる人を決めましょう。明日以降もそのつどくじ引きで」
真希さんが再び場を進行させる。
6人の候補者が、それぞれ選んだ紙を手に取る。
…誰になってもかまわないけど、やっぱり緊張するね。
不参加の茜さんは「私はハヤトくん『で』遊べばいい訳だし」と誤解を招く発言。
ハヤトさんはメンチカツ用の食肉として屠殺を待つ犬みたいに哀愁漂う表情だ。
いくら親戚みたいな付き合いでも社会人vs年頃女子(しかも雇用主サイドの娘)。
まさかの同室寝泊まりは子供感覚じゃ済まされないだろう。
不適切な事があったら茜さん同意でも周りが黙っちゃいない、事と次第によっては職を失った上に新聞沙汰。
ええ諦めて下さい強く生きて下さい、同情は出来てもどうにもできません、僕とは別の地獄を見て下さい。
クジを手にした面子、梓さん早紀さんは普段通り、亜里沙さんは眉一つ動かさない。
落ち着かないのはチラッチラッと僕を見てくる葵さん、相変わらず姫さんは荒ぶり加減、蜜恵さんは藪に潜んだ肉食獣状態。
そして開示(ざわ…)
僕自身の心臓がドキドキ言っているのがよくわかる。
「せーの、で開くわ。」
真希さんの一言。
「せーの!」
「私だ!!」
梓さんの声がした。
彼女が示した紙には、「樹くん独占権許可証(1日目限定)」となっていた。
真希さん・・・・
「残念ねえ。」
「梓さんが当選かあ。」
ほかの娘たちが残念がっているのを見て、僕は悲しくもあり、嬉しくもあった。