生徒会日和。 84
「無理すんなよぅ、おじょーちゃん」
「だ、だって…」
起き上がったはいいがまだ肩で息する茜さんに歩さんがスポーツドリンクを差し出す。
(茜さんより歩さんのほうがさらに小柄なのは秘密です)
「…ふぅ」
一口飲んでため息つく茜さん。
「あぁ、あいつはもう行ったんですね」
「没収品返却には一番都合がいいかなってね」
早紀さんがにこやかに言う。
「あいつがいなくなったんで、皆さんに提案なんですけどねー」
茜さんが立ち上がって話し出す。
「よかったら、夏休み、うちの別荘に来ませんか?」
「あ、茜さんちょっと待って、皆もちょっとお静かに。」
そうだ奴のKarateを侮ってはいけない(そもそも空手いやKarateって何?まぁいいか)。
僕はまずドアに耳を当て聞き耳ロールした後で廊下を目星、よしいない。
次に脚立とペンライトで通風口や天井裏を目星ロール、よしいない。
最後にスマホでちゃんと早紀さんの仕事してる?と確認、どうやらもう学校外らしい騒音と共に大丈夫だ、問題ないという返事。
とりあえず祐くんが現れる心配はなさそうで、僕は茜さんに目配せした。
「あ、樹くん大丈夫よ、無駄だから諦めてるし。」
「祐くん『アレ』だけど、ストーカーする部類じゃ…。」
「アイツが休み期間に滞在する親戚の家、私の別荘と近所だから。」
「ああ…もう慣れてるんですね…わかります。」
きっとGW、下手すれば春休み辺りにも(ご近所情報で)同じ高校でどうとか関わったか、いやひょっとすると先程の容赦なさからして中学やそれ以前から関わりがあったのか、まぁ触れないでおこう。
少なくとも祐くんが直接、断りなく茜さんとこの別荘まで押し掛ける事はなくとも、一歩外に出れば普通にエンカするだろう。
そうだ明らかにどうしょうもない事は諦めるとしていい方の話題に持ってこう。
茜さんが皆を別荘に誘ってくれるという話…いや別荘って言ったよねこの人?
「えーと、もう一度確認しますが茜さんや」
「うん?」
「今、別荘って言いましたよね?」
「うん」
「…別荘ですか?」
「うん」
…住んでる世界違うんじゃないかこの人。
歩さんは当然ながら、真希さん・早紀さん・梓さん・葵さんですらも少し驚いているような。
「…どしたのみんな?」
「君は普通に言ったようだけど、周りはそうじゃないということだ」
姫さんが茜さんの肩をポンポンと叩く。
僕の家にも別荘はあることはあるけど・・・・
「えっ?茜さんも別荘持ってるの?」
「も・・・ってことはまさか、樹くんも?」
「はい・・・・。祖父が手に入れた小さく古い建物ですし、父が亡くなってからは使ってないですけど。」
そこに割り込んできたのが早紀さん。
「へえ〜。樹くん、意外とお坊ちゃんだったんだ。でも茜ちゃんはすごいよ。自動車メーカーの春田グループの創業家なんだから。国内外合わせて10か所の別荘があるんだよ。」