生徒会日和。 79
「茜ちゃんはお嬢様だからねー、庶民の感覚がわからないんだよー」
「う、うっさい姫!誰がお嬢様よ!アンタも軽口叩いてないで仕事しなさいよ」
「ちゃんと掃除してまーす」
姫さんが茜さんをおちょくる。
しかしまあ、なんだかんだこういうことを言えるってことは、結構昔からの仲だったりするんだろう。
なんだか微笑ましい。
しかし『姫』という名前を持ちながら、姫さんは意外と庶民的だったりするのかね?
そして茜さんの家庭もちょっと気になったり。
僕と真希さんは、運び出す最初のロッカーを廊下に出した。
「これを、教室まで運ぶのは、ちょっと大変ですね」
「台車を2つ入れよう」
そういって、真希さんは数分後には台車を2つ持ってきた。
僕がロッカーを最初は傾けて、次は持ち上げて、真希さんがその下に台車を入れた。
段差はあるからその都度持ち上げたりしなくてはならないが、幸い教室までは階段はなかった。
そして、1年A組の前に着いた。
授業後の教室、すでに皆帰っていてシーンとしていた。
前を行く僕が扉を開ける。
入り口につかえて入れない、ということはない。
ただ、教室の後ろに生徒の机と椅子があり、少々動かす必要がある。
「ここからどうしようかしら」
後ろの真希さんが両脇に手を置いて言う。
「あら、何してるの?」
そこにやって来たのは我がクラスの担任・麻由美先生だった。
真希さんは、なぜロッカーを運んできたのか、これは早紀さん経由で先生方の了承を得つつあるが、麻由美先生には行き違ってしまい申し訳ない、ここに改めて置かせてくださいとお願いする、そして、これは1年女子の学校生活をよくしようという、僕の発案なのだ、ということ、を手短に説明した。
「まあ、穂積くんが考えて。さすがね」
「いえ…ある女の子から、教室と更衣室、ロッカーが遠いという不満の声を聞いたもので」
「そう。それをすばやく行動に移すところが素晴らしいと思うよ」
麻由美先生はニコリと微笑んだ。
「大丈夫?入るかな?手伝おうか」
「はい、ありがとうございます」
麻由美先生も、ロッカーの搬入を手伝ってくれた。