生徒会日和。 78
「とりあえず、棚を運ぶ組と機材庫を掃除する組に分かれます。メンバーはこちら」
歩さんは即興で書いたメンバー表を僕らに示す。
僕は棚運び組で、他には梓さん・亜里沙さん・真希さん・蜜恵さん・茜さん。
それ以外のメンバーは掃除組だ。
「…私も力仕事組なのね」
「真希の腕力はどう見たってひははひほおおおおお」
腹いせに歩さんの頬をつねって楽しむ真希さん…やめましょうよ。
ともあれ、僕たちは動き始めた。
棚運び組、とはいっても蜜恵さんが
「運ぶ前に、棚拭いた方が」
のようなことを言って、近くのトイレからバケツと何枚かの雑巾をもってきて、まずは拭くところから始まる。
拭きながら、僕はふと思った。
「あの、歩さん」
モップを持った歩さんに、僕は聞いた?
「ん?」
「ここの棚とかを運び出したり、教室の方に置いたり、って…多分大丈夫とは思うのですが…一応許可は得たのでしたっけ?」
その辺を歩さんと真希さんが説明する。
「ここのは概ね員数外扱いだから、事後承諾でも十分過ぎる程オッケーよ。」
「それにいま早妃にメール送ったから、居残ってる先生に話を通してくれる様になってるわ。」
そもそもの員数外発生というのが数年前までの生徒会での話。
各種委員や部活動等での連携が薄かった上、互いの余剰品を確認もせず発注を繰り返していた。
実際には化学だの体育だの、何かしら○○倉庫と名の付く場所には、どこでも使える筈の事務用品まで含め何かしらの余剰物資がひしめいているそうだ。
スペースが無くなると余所の××倉庫に押し込み、それで追いつかなくなった物は破棄されるか『機材庫』と言う名の終着駅に流れ着くそうだ。
最近ではここに物を置きに来る人さえおらず、見事に埃をかぶってしまった棚等の物資。
早紀さんの報告を聞いた先生はもしかしたら驚き珍しがる人もいるかもしれない。
さて、いざ棚を持ち出すわけだが、これだけの物からどれを選ぶかだけでも一苦労だ。
「真希さん、どうします?」
「とりあえず、運びやすさと保存状態を見てベターな物を運びましょ」
掃除組では助っ人として姫さんが連れてきた小坂井姉妹がさすが双子というコンビネーションを見せていた。
僕と真希さんが運ぼうとした錆すら浮いてないロッカーの製造刻印は五年前、茜さん梓さんが作業している方ではもっと新しい物が出てきた様だ。
「何これ!大企業のパソコンじゃあるまいし!事務用品二年でお蔵入りとか非合理!」
「そ、下手すりゃホムセンで足りないボルトナット買い足せばいいのまで捨てられちゃう。」
「私は真面目に言ってるんですよ梓さん?それどこの宇宙人用語ですか?」
「あはは…あたしゃ茜ちゃんが宇宙人に見えて来たよ。」
茜さん本人も使える物は使う、多少ダメでも修理して使うという理屈は理解しているのだろう。
ただ日用大工関連の知識不足で会話が噛み合わず、梓さんは軽く涙目で説明していた。
僕から見ても優等生寄り、勝ち気で何かと肩肘張りながらも、世間知らずな茜さんが可愛く見えていた。