生徒会日和。 77
「あの、それ、イメージ湧いたし、実物見に行きませんか?あとその部屋も。機材庫って、どこなんですか?」
茜さんが気を取り直して、そう言った。
歩さんがホワイトボード上の地図で場所を示した。消えたのは絵だけで、地図や文字はうまく消すことから回避されていた。
早紀さんを留守番にして、それ以外のさっきいたメンバーが機材庫に着いた。
「ほこりだらけですねぇ…」
「ほとんど人が入らないからね」
真希さんが言う。
「まずはここの掃除から始めないといけないような気がしますね…」
葵さんが表情を曇らす。
機材庫には目当てのロッカーやスチール棚が並ぶ。
サイズ的には教室の端や教室手前の廊下にも置けるくらいだが、仕切りなどについてはそれなりの細工が必要になりそうだ。
「で、どうしましょう。僕らだけでは人数が不足しそうな」
「私たちの意見に賛同してくれる人たちを呼び寄せるんだよ!」
歩さんがドヤ顔で言い放つ。
…それで集まったら苦労はしませんが、伝はあるんですかね?
「主な受益者は一年生!一年生を集めればいい」
他力本願ですか…この単語、そんな使い方をしたらその宗派の人に怒られるのだけど…
でも…蜜恵さんとか、姫さんに声をかけてみようか。
そう、少なくとも「せめて、ロッカーを教室においてほしい」と言ったのは蜜恵さんだった。
「あの、ちょっと心当たりに、連絡してみます…すぐかどうかは分かりませんが…」
僕はスマホを取りだし、無料通話&チャットアプリで『ロッカーを教室の近くに置けるかもしれないんだけど、ちょっと片づけとか運搬とか手伝って、とか言っていい?』のようなことを、蜜恵さんと姫さんに送信した。
すぐに返信がきて、姫さんから『すぐ行くよ!』というメッセージ。
他にも数人、B組の女子がやってくるという。
「どうやら数人来るみたいです」
「よいことです」
僕の回答に歩さんは満足したようだ。
―そして
「樹くん、お待たせ♪」
「まさかこんなに早く話が来るなんて思わなかったなぁ」
姫さんに蜜恵さんを含むB組の女子5人が程なくしてやって来た。
(後の3人は剣道部で割と仲のよかった蟹江亜里沙さんと、『美人双子姉妹』として他のクラスからも人気があるらしい小坂井茉莉花さんと茉莉亜さんだった)
「ちょ、樹くんの伝って、えー!?」
まさかのクラスメートの登場に、一番驚いたのは他でもない、茜さんである。
「なんで知り合いなの??」
茜さんは僕と、姫さん蜜恵さんに向かって聞いた。
「うん、ちょっと…ね」
お互いちょっと目を合わせながら適当に答えた。
「では、皆さん、集まったところで、作戦なんだけど…」
歩さんは、僕たちに向かって演説するように言った。