生徒会日和。 42
―生徒会室。
すでに歩さん・梓さん・早紀さんの3人が座っていた。
「おっ、葵も大丈夫なのか」
「はい、心配かけてすみません」
「まあまあ、無理すんなよ」
梓さんが熱田さんの肩をポンポン叩く。
全員が揃ったところで、今日の会議が始まる。
「さて。今日は1年生が体力測定でした」
歩さんが前に立ち、話を始める。
―ちなみに、2年生と3年生の体力測定は前日までに終わっている。
歩さんは熱田さんのほうを向いて
「葵ちゃん、もう大丈夫?」
「あっ…はい。心配かけてすみません」
熱田さんは場にいる全員に向けて頭を下げる。
「まあ、こういうこともあったんだけど」
歩さんは話を続ける。
「学校全体の目標として、生徒の運動能力を上げる、というのがあるんだ」
「…初めて知りました」
春田さんが呟く。
実は、僕もさっきの真希さんの言葉で初めて知ったのだ。
「いつからそんな目標が?」
気になったので、歩さんに尋ねてみた。
「今年、だったかな。県内のデータで桜樹台の生徒の運動能力がワーストだったらしいよ」
「因みに、学力はトップなのよ」
真希さんが付け足す。
…わかりやすい学校だったんですね。
「うーん、そこまで目の色変えてやらなくてもとは思うけど、ワーストってのは響きが悪いよなー」
梓さんが言う。
「樹くんたち、今年入った男子もイマイチなのよ」
真希さんがデータの書かれた紙を持っている。
今日やったデータが、もう行き渡っているってのもすごい話ですねえ。
「樹くんは心配してないけどね」
歩さんは笑顔で言う。
…とはいえ、僕がいる剣道部も、僕以外の男子はまったくの素人で、且つ4人とも運動能力はお世辞にも高くはない。実は由々しき問題なのだ。
「樹、剣道部の男子はどうなんだ?」
梓さんから予想していた質問が飛ぶ。
「…正直言って、今は戦力にはなりません」
「やっぱりか」
「何とかして教え込んではいるんですが、基礎体力がないのが現実ですね」
「厳しそうね」
真希さんもため息をつく。
「ただ、学校の方針でスポーツ特待生を入れることはしたくないようなの。もうちょっと我慢が必要ね」
真希さんが言う。
私立だからそういうことも出来るかもしれないが…
学校の方針なら仕方がない。
「それだと運動部強化って言っても何も出来ないですよね」
「それが現実ね」
僕の言葉に、真希さんが反応する。
「剣道部…なあ樹、お前の父さんは道場主で、姉さんはレジェンド的な人なんだろ?」
梓さんがいきなり尋ねる。
「はあ」
「何とか頼んだら何か出来る…とかないか?」
「いえ…父さんは2年前に亡くなったので…それに姉さんは今一緒に住んでないし、正直、苦手だったので…」