生徒会日和。 32
「何言ってるの。学年トップの成績を誇る天才君が。」
春日井先輩は微笑んでいる。
自慢じゃないけど僕の成績が学年トップなのは本当だ。
「目安箱についてはどう思う?」
「いい取り組みだと思いますよ。生徒会としても皆さんの意見は大事ですから。」
「おー、それならよかった。アレの発案者、実はうちの部長なんだ」
「あ、そうなんですか」
「うん、部長と会長の歩先輩って幼稚園の頃から大の仲良しなんだって」
「へぇー、それは知りませんでした」
「新聞部としても何か助言できることがあれば協力しますよー」
「それは助かります」
「早紀や梓とも仲良くね」
「はい」
春日井先輩との『インタビュー』は数十分で終わった。
先輩と別れて、生徒会室に向かう。
「失礼します」
「あら、樹くんいらっしゃい」
室内は早紀さん一人。
それ以外はまだ来ていないようだ。
早紀さんはアイスコーヒーを作っている。
「今日はちょっと遅かったね」
「春日井先輩とお話してまして」
「あー、澪ちゃんかぁ。役員インタビューで載るね」
「そうなんですね」
早紀さんに気になったことを聞いてみよう。
「新聞部とは仲がいいんですね」
「最近になってからだけどね。今の部長さんと歩さんが仲良しだから」
「やっぱり」
「うん…あ、今日はその新聞部の部長さんが来るんだよ」
「え、本当ですか?」
「うん、お姉ちゃんと梓ちゃんが今日は用事があって」
「真希さんと梓さんが?」
「梓ちゃんは部活の助っ人として練習に参加してる。お姉ちゃんは、特進クラスの補習なんだ」
ああ、そういえば真希さんは3年生でトップの学力だっけ。
普通にやって東大や京大に合格できるだけの才能の持ち主だし。
「真希さんはすごいですよね」
「お姉ちゃんは何でも出来てすごいんだ…憧れちゃうよ」
そういう早紀さんの顔が、少し寂しく感じた。
―早紀さんと僕は似てるところがあると思った。
優秀すぎる姉がいて、しかもその姉と同じ学校に通っていること。
僕は姉とは年齢が離れているし、何より男女の違いもあってあまり比べられることはなかった。
しかし、1つしか歳が違わない早紀さんは違うだろう。
「早紀さんは、真希さんと比べられたりとか…」
「うん、いっぱいあった。お姉ちゃんができることを、私が出来なくて、悔しいときもあったなぁ」
「真希さんが出来すぎるだけだと」
「それは当時から思ってたんだ。でも、親とか親戚とかはそれをわかってもらえなくて…それが一番つらかった」
「でも、真希さんのことは…」
「大好きだよ。誇りと憧れのお姉ちゃんだよ」
早紀さんは健気に笑顔を見せる。
「必死になってお姉ちゃんに追いつこうとした。でもできなかった。そんな時、見かねたお姉ちゃんは、私に言ってくれたんだ。『無理しなくていいよ。早紀は早紀らしくやればいいんだから』って」
「なるほど」
「その日から、私はお姉ちゃんに追いつこうとするのをやめたんだ」