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生徒会日和。
官能リレー小説 - 学園物

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生徒会日和。 225

 顔を上げた歩さん、ふと、僕と目があった、ような気がした。壇上から、しかも涙で目を濡らして、歩さんがこちらを認識したのかは不明。でも、僕は必死に“がんばれ”の心のメッセージを送ろうとし続けた。

 「…でも、もう、行かなければならないときなんだ、ってわかってる。この三年、一生忘れない…全校生徒のみなさん…生徒会本部のみなさん、特に……樹君!…今まで、ありがとう!」
涙と、震える声で、それでも歩さんは最後はしっかりと自分の言葉で、伝えきった。
願いが通じた。感動した。また僕の名前が…こちらまでもらい泣きしそうになるくらい。

歩さんは最後に一礼した……が、勢いが良すぎてマイクに頭をぶつけてしまった。物凄い音がしたけど大丈夫かな。

壇上から去る歩さん。制服の袖で顔を押さえて、フラフラとした足取りで自分の席に戻っていった。

 そうして、卒業生全員の歌、卒業生退場、と式は進んで、卒業式は終わった。

 “歩さんに会いたい”
 僕は強くそう思った。教室に戻る途中にチャットアプリで送ったメッセージはなかなか既読にならなかった。
 そして教室から解放されたあと、僕は歩さんが一番いそうな場所…生徒会本部室に、足早に向かった。
辺りはシーンとしていて、やってくる人影もなく、廊下を冷たい風が吹き抜けていく。
当然生徒会室の電気もついていないのだが、今は日差しがあるので暗くは感じない。
ノックしても返事はなかった。僕は静かにドアを開けた。

校庭を見渡せる窓の方を向いて、歩さんが椅子に座っていた。

「待ちました?」
「………全然」

 僕は、扉を閉めて無意識に鍵を掛けた。
 「歩さん、答辞、よかった…すごく、感動しました!」
 「ありがとう…すごい、失敗しちゃったかな、ってちょっと思ってたけど、そう言ってもらえて、うれしい…」
 そう言いながら、歩さんは立ち上がって、僕のすぐそばまで近づいてきた。

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