生徒会日和。 223
料理研の助っ人ってなんだろう。ああいうところも運動部みたいに大会とかってあるんだろうか。クラスにもそこの部員いたはずだから今度聞いてみよう。
「こんなに高校生活が楽しくなるなんて思ってもいなかった。だから、今改めて歩さん、真希さん、先輩達にお礼を言いたい。そして私はその思いを引き継いで桜樹台をもっと素晴らしい学校にしていきたいと思ってます。ありがとうございました!」
梓さんが深々と一礼すると、場内から割れんばかりの拍手が起こった。
壇上でやり切った清々しい表情の梓さんが、どこかに向かって手を振る。
おそらくその先には歩さん、真希さんがいるのだろう。
梓さんは自分の席に戻る途中にもう一度ガッツポーズを見せた。
「続きまして、卒業生代表…」
いよいよ歩さんの挨拶である。
……なのだが、壇上に向かう歩さんの様子がなんだかおかしい。
歩さんは、壇上に紙を広げた。
「えぇ…あの…」
歩さんは顔を上げた。それでも、表情はなにか優れない。
「3年前の4月…私達は桜舞う中、この学校の門をくぐりました…」
歩さん、再び、顔を下に向ける。そして、しばらくの沈黙。スピーカーからは、なにか、すするような音だけが流れる。
その後、歩さんは、再び顔を上げた。そして、壇上の紙を、払うような動作をした。
「…ごめんなさい…後輩の、あんな素晴らしいスピーチをもらって。私も、自分の言葉で、話そうと、思います」
歩さんの声は明らかに震えていた。
「中学の頃はそこまで出来もよくなくて、部活だって特に何もやってなかった私が……変わるきっかけになったのが、生徒会役員になったことだった」
「この学校のシステムは特殊で、生徒会選挙は人気投票みたいなもの。1年生の秋にいきなり私は選ばれて、ものすごく混乱した」
「ちょっとしたイジメも経験してたし、人の前に立って仕事するなんて絶対に合わない。申し訳ないけど辞退しようと思って生徒会室を訪れた」
「緊張して、扉を開けた。そうしたら、先輩達は皆、お茶を飲んでいて、もう、ティータイム、って感じで、名乗ったら自然に座るように言われて、座った」
歩さん、ちょっとつばを飲み込んだみたいだった。
「なんか、いつの間にか、いるのが自然なようになってきて、断るなんて忘れて…でも、お茶飲んでばかりいたわけじゃなくて、それから、ちゃんと仕事もあって」