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生徒会日和。
官能リレー小説 - 学園物

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生徒会日和。 221

早紀さんとは式の直前まで入り口の前でそんな話をしていた。
ちなみに、在校生代表挨拶は梓さんの担当。
明るく砕けた感じの梓さんがこの式の場においてどんな言葉で挨拶するかも楽しみだ。

…自分の席に戻る。
いよいよ卒業式が始まる。

まず、卒業生の入場。
歩さんは先頭にいた。ちょっと緊張してるかもしれない。

全校生徒を前にしてもざっくばらん、いつもどおりの姿を見せていた歩さん。
それだけに今日の表情は今までに見たことのなかった様子だった。
この学校で過ごす最後の日だからかもしれない。

『これより、桜樹台高校卒業式を始めます』

まず壇上に立つのは校長先生。
生徒会役員でありながら、校長先生と話をしたことがあったかどうか…
恰幅もいい、人柄もいい老紳士が壇上で挨拶する。

こういう時の校長の話というのは得てして長ったらしくてあまり聞いていても頭に入ってこないのが定説となっているのだろうが、うちの場合はそれがない、短くそれでいて深く胸に刻まれる気がする言葉を言う人なのだ。

校長の話が終わり、次に来賓の方からの言葉…まるで空気を読んでくれているかのように手短に済んでいき、在校生代表の挨拶を迎える。

先にも言ったが、今年は梓さんの担当だ。

壇上に立つ梓さん、期待を込めて見つめていよう。

「えーと…」
壇上に立つ梓さんは遠くから見ると凛々しく見えるのだが、その表情はどこか不安というか、緊張しているのかなと思わせる。
まあ、仕方ないことだろう。同じことをやるときは僕だってそうなる。

制服のポケットからカンペらしき紙を取り出す。
それを見て何か考える梓さん。

 「梅が咲き、春一番が吹き、桜のつぼみも膨らみ始めた今日この頃、先輩の皆さんの門出も、もうすぐそこですね」
 思ったより、淀みなく始まったな、と思った。
 「私達が、不安の中、桜樹台高校の門をくぐった時、先輩方は、優しく迎えてくださりました…」 
 ここに来て、間があいた。不自然な間。
 音響担当が、装置の故障なのか、と焦り始めるのが見える。
 梓さん、不意に、壇から横にそれ、さきのカンペらしき紙を高々と掲げた後、胸の前まで下げ、勢いよく、左右に、引き裂いた。
 「こんな作文、私のキャラじゃない!」
 

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