生徒会日和。 191
「…マジでコレどうしましょう」
「持ち帰ります。なんで樹のお家にあったんだろう」
コレはヤバい。まだ立ち直れない。歩さんは想像以上に破天荒…いやむしろ頭がアレだったというのが物凄い衝撃だ。
「…ん」
アルバムの中からはらりと一枚紙切れが落ちた。
『樹くんへ 最愛の人のことをもっと知ってほしいのでこれを贈ります
仕掛人:一宮真希 証言者:蘇原美郷』
……お、おい。
僕が熱を出したとき、真希さんも見舞いに来てくれたけどいつの間に…
そして歩さんの黒歴史の類は幼い頃からの仲である美郷さんからの情報提供か…
「歩…」
「いやぁばれちゃったなぁ、あはははははは」
笑い飛ばす歩さんだけどその顔は引きつっている。
まだ動揺してるだろうと思いながらもその身体を後ろからそっと抱きしめてみた。
抱きしめた理由、僕は歩さんの(おもらしは別として)数々の奇行から、一つの答えを導き出していたから。
「寂しかったんだよね?」
「・・・。」
僕が単純に歩さんが孤独だったと解釈したという話ではない。
高校以前の歩さんは、親友の美郷さんや真希さんとは別腹の何かを求めていたんじゃないだろうか、僕はそう解釈していた。
正直あの二人は歩さんを理解しすぎていて、深すぎる。
しかし、事実あの二人はどう考えたってこうした悪ふざけにまで付き合うタイプではない。
もっとこう、ガキはガキらしく程々に反社会的なバカをやれる気軽な悪友、それを求めていたんじゃないだろうか。
歩さんのそんな部分を理解してほしい、そんな真希さんの意図を、僕は理解していた。
だから僕は今一度、歩さんを強く抱きしめる。
「一冊残らず…出版してやる…!」
「うんうん…ん?」
歩さんが僕の腕の中、さながらどこぞの巨人vs人類みたいな物言いでつぶやく。
「茜ちゃんの未公開原稿…樹の『総受け』本の数々。」
「だからなんなんですかそれ…ってまさかそれはァアアア?あれかァアアア!」
生徒会一年生書記、春田茜。
いつぞやのエロ本事件以来、彼女は漫研に出入りしていた。
さらに春田さんは『R15範囲内』と銘打って、生徒会の合間に怪しげな同人誌を描いている。
色々と学園側の提示する同人活動条件はクリアしている都合、基本的に咎められない。
ただ実在の人物に関してどうこうとなれば、当然規制の対象。
本当に個人や仲間内で楽しむ範囲内となる訳である。
それが歩さんの手に渡ってしまった。
…っておかしいな、ふつうジャ○プやサ○デーなら過去なんて僕が以下略で、ホロッとくるイイ話な流れじゃなかったの?
「別に脅す気はないけれど、こっちも色々握っている訳さ。」
「そんな…事件の捏造でさえない架空の物語までも持ち出すとは…。」
そしてこの無茶ぶり、現実は非情である。