生徒会日和。 142
「えっとね…樹くん…じゃなくて、樹」
歩さんが初めて僕を呼び捨てにした。
「どうしました?」
「ふふ、この方が恋人同士、っぽいかなって」
歩さんは悪戯っぽく笑う。
「だからね、これから、2人のときは敬語禁止」
「えっ…でも、歩さんは先輩だから…」
「ノンノン、先輩じゃなくて…」
「はい…」
手をつなぎ、月明かりの下を歩く。
いつもより長く、それでも楽しい帰り道だった。
結局歩さんを家まで送る形になって、帰りは遅くなってしまったけれど。
…今日のことは、一生忘れないだろう。
…明けて翌日
歩さんと付き合い始めて最初の朝、だろうか。
一応、付き合っていることは周りには隠しておこう、と僕は思っているが…
「おめでとう樹くん。歩と付き合うことになったのね」
…その願い、目論見はあっさりと崩れた。
昼休みにたまたま出会った真希さんに、開口一番こう言われたのだ。
「言っちゃいましたか」
「言わなくても、歩の溢れんばかりの嬉しそうな顔を見ればわかるわよ」
「ああ…」
歩さんは気持ちがもろに顔に出るタイプだからなぁ。
「でも、これでよかったわ。私の願ったとおりになった」
真希さんは笑顔で言う。
「正直言って、僕が歩さんを支えてあげられるか…自信はないです。でも、歩さんの笑顔を隣で見ていたい、とは思いました。その想いだけはきちんと歩さんに伝えたつもりです。」
「大丈夫だよ、樹くんと歩、お似合いだから♪」
そう言って、真希さんは僕の背中を叩いて応援してくれた。
「で…そんなリア充な歩と樹くんは、昨日の文化祭でどんなことをしたのかなーっ?」
「えっ、そ、それは…」
「閉幕宣言の後、体育館に残っていたでしょ、歩も同じだったし…」
「まあ、あのタイミングで…歩さんに告白して…」
「うんうん、その後はどうしたのかなぁ?」
…真希さんはニコニコしながらさらに聞いてくる。
「そ、それも、言わないといけないんでしょうか…」