生徒会日和。 124
その気になれば離れることも可能、しかし、歩さんも僕もそうする気はまったくなかった。
「樹くんの身体、あったかいね」
それどころか歩さんは僕にギュッと身を寄せてきた。
「歩さんもですよ…」
そう言い返すが、それよりもグイグイ押し付けられるふくよかなお胸が気になってしまう。
それ以上されたらちょっと大変です、歩さん。
…しかし、そんなことも知らないであろう歩さんは、僕の身体に身を預け目を閉じ、なんだかとても気持ちよさそうな顔。
それを見たら無理矢理引き剥がすこともしたくない。
僕はある一部分に鎮まれ、鎮まれと思いながら歩さんの頭を優しく撫でた。
「えへへ〜…」
まるで幼い子供をあやすような気分だ。
不思議と安心感も沸く。
「樹くん…大好き♪」
…えっ
「樹くん…樹くん…」
うわ言のように僕の名前を呼び続ける歩さん。
僕は完全に油断していた。
歩さんの予想外の言葉、それに動揺していた、こともあるかもしれない。
「樹くん…好き。大好き…」
ここまでストレートに感情を出してくる歩さんは、初めて見たような気がした。
…しばらく、この体勢のまま、夏休みにあったいろいろなことを振り返る。
小坂井姉妹の『好きな人っているのか』という質問。
蜜恵さんに告白されたこと。
そして、真希さんから聞いた『歩さんが僕のことを好き』だということ。
…で、今に至る。
蜜恵さんとは夏休みがあけた今も『友達』としての関係を保っている。
クラスは違うが、たまに一緒にお昼を食べたりしている。
…さっきやってきたあの二人は付き合っている…ってことになるのか?
まあ梓さんとの関係にしても…これは僕には関係ないかな…
…そして、目の前の歩さんだ。
真希さんは歩さんが僕のことを好きだと言っていた。
それに加えて、さっきの言葉。
あの時と今と、さまざまな言葉が頭の中をぐるぐる回って…僕どうしたらいいですか…なんて思う。
しかし今の歩さん、僕に抱きついた姿は、愛しい恋人というよりはまるで愛らしいペットのようだ。
頭を優しく撫でると「にゃ〜」小さく声を上げる。猫ですか。
…しばらくこんな時間が続いた。
結局、今日のところは何の進展もなかった。