新しい性活 32
僕はさっき目を背けた写真集に目を向けた。確かに、ぱっとみると刺激的だが、しばらく見ているとそうでもないことに気づく。
“でも、慣れる、と言っても途中から入った女子はなかなか裸を見せたりしないのでは”と言おうとして僕は口をつぐんだ。
もう、大規模な部活の女子は実質混浴に同意しているのだ。
理事長のこの考えは、もう実現寸前まで来ているのか…
「いろいろ課題があることは、私たちも理解しているの。例えば、社会に出たときのギャップをどうするか。もちろん、初等部で、学園の外では裸は恥ずかしいことなんだ、と教えている」
僕は「ギャップ」と聞いて、一瞬、裸が当たり前になった生徒が卒業して不用意に異性の前で裸をさらしてしまう心配なのかと思ったが、それはもう織り込まれているようだった。
「ギャップ、とおっしゃいますと?」
「この社会の文化の中で、通常セックスできるような状況で、セックスできなくなるのではないか、ということ」
この理事長からストレートに“セックス”なんていう言葉が出てきて、半歩退くくらいに驚いた。この方も、決して、男女のことを認めていないわけでは、ないんだ。
「え、ええ、そうですよね」
「もちろん、誰でもスキンシップしたい欲望を持っていることは、消えてはいないの」
「はい…」
僕は、さきの茶室でのスキンシップと“スキンシップは大切に思っている”という理事長の言葉を思い出していた。
そして理事長は一息入れて、言った。
「『不純異性交遊禁止』を守ろうと、現場では同性間のスキンシップを、認めてきた、という報告もある…」
同性?!…僕はそれを聞いて、頭の中から一つのイメージを追い払おうとした。同性間って、人数の多い女子同士のことだよな…まさか、男同士なんてことは…いや、男同士はあり得ない!
「同性間ならいいのか、となると、男女を意識せずに、っていう方針にも反するし、将来のセックスにもマイナスになりかねない」
僕は、身近な女子同士の絡みを想像して禁断の想像を避けていた。
「知ってるかもだけど、理事会は『お友達』だけになって、私の理想を邪魔するメンバーはもういなくなった」
理事長は窓の外を見た
「でも、逆にね、お友達だけで話し合っても、あたらしいアイディアは生まれてこない…そこで、お友達でない、仲間を、副理事長として迎えることにしたの」
理事長は先の何枚かの書類の一枚を示した。
“広野 永士 海峰大学 社会学部准教授”
「広野先生はね、大学にいくつかある寮の総顧問も務めているの」
僕は、あとでその方がどんな人なのか検索してみようと思った。准教授なら学園のサイトには少なくとも載っているだろう。
僕が見終わったのを確認すると理事長は書類をしまった。
「この話は、生徒にはまだ一部にしか伝えてないから発表まで秘密ね」
「はい…」
何で、理事長はこんなふうにいろいろ説明してくれるのだろう?いろいろ聞きたいと思ったのは間違いないが、その気持ちが読まれたということなのだろうか?
「あの、理事長、いろいろ説明して頂いて、とても嬉しいです。でも、何でこんなに説明して頂けるのですか?」