先生教育委員会 19
「なにを……しているんですかっ?」
駅の側にある運動公園の公衆トイレに入ろうとした時だった、金切り声――といっても過言ではない怒声が俺の鼓膜を刺激してきた。
なんで、駅のトイレじゃないのかって?
そりゃ、おまえ……朝の駅のトイレの人口密度は半端じゃないぞ。そんなところに女生徒を連れ込みほど、俺はチャレンジャーじゃない。
――閑話休題。
加茂の肩に手を回すようにして公衆トイレの入り口に足を踏み入れた格好で俺は固まった。
機械仕掛けのように歪な動きで振り返る。
この声に心当たりはふたりいた。
だが……、
この、人を責めるような強い口調と言えば、必然的に絞られる。
そして、全く予想通りの人物が鋭いエッジをキラーンと輝かせて俺を睨んでいた。
「さ、沙希……」
「生徒の肩に手を回すとはどういうことですか!?」
「いや、これはっ……」
どうする……この状況……。
「加茂が、あー……そう!腹が痛いらしくてな」
怪訝な顔を崩さずに、沙希はじーっと俺を見ている。
「そう……ですか……」
そう呟いた沙希は、あからさまに目を泳がせた。
やけにアッサリしてるな……。
それに、なんだかモジモジしているように見えるが……?
「そ、そういうことなら私が引き継ぎますからっ、兎に角、加茂さんから離れてくださいっ!余計な誤解を招きます!」
もっともすぎる意見だ。
密着した男と女が人気のない公園の公衆トイレに一緒に入っていく……あらぬ妄想は誰でも沸くか。
「じゃ、じゃあ頼んだ」
無理に食い下がると色々メンドーだからなぁ……。
二人を残して渋々公園を出る。
あぁ……ムラムラする!
このムラムラを持て余したまま昼休みまで待つのか……。
こんなことなら、いつも通りに出勤すればよかったなぁ……ん?
「明石っ」
「ひっ……」
あからさまにビクッとする明石。
いいねぇ、その反応……。
「おはよう」
「お、おはようございます……」
いつものふわふわした声色が、今は切迫の気配を含ませている。
………俺はついてるなぁ。
「さっき加茂に会ったぞ」
「そう、なんですか……」
「アイツ、相変わらずスカート丈が短くてなぁ?」
「………………」
察しのいい生徒は好きだぞ?明石。
俺の言葉に対する無言に含まれた姿勢。
「荷物を置いたら生徒指導室に来い」
その要求に明石
「……はぃ」
と、小さく承諾した。
生徒指導室。
特別教室の集まった、通称B棟の一階にある。
つまり、朝早くからこの棟に踏み込む人物は滅多にいない。
なんて都合のいい部屋だろう。
明石を目の前にして、内心でほくそ笑む。
「ほら、さっさとやれ」
「はぃ……」
椅子に座る俺の股座に、跪いた明石がいた。
ボタン全開のシャツの間から純白のブラジャーが覗いている。