がくにん 9
双樹は話しを一旦区切った後、再び語り出した。
「ですが、家を抜け出したものの、家では勉強ばかりで、外の世界に疎かった私は迷子になってしまったんです。泣きながら道端をフラフラしていたら、私と同じ位の年の子だったでしょうか?偶々通り掛かった男の子が泣いている私に声を掛けてきてくれたんです」
以下、回想
「ヒク、ヒック」
煌びやかな服を着た少女が、目に手を当て泣いていた。
通りかかる人間はいるが、関わりたくない為か、少女を一瞥しただけで、そそくさとその場を立ち去ってしまう者ばかりだ。
しかしそんな中、少女と同じくらいの背丈の男の子が、泣いている少女に話し掛けた。
「…い!お前、大丈夫か!?」
「……だれ?」
「俺か?通りがかりの子供だよ(本当の事言う訳にはいかないしね)?」
男の子は無難に答える。
「それで、お前はどうしてこんな所で泣いてんだ?話してみて、俺に出来る事なら手助けするからさ」
「……本当?」
「うん!困ってる(or泣いている)女の子がいたら無条件で助けてやれって父さんが言ってたからね(それを隣で聞いてた母さんすごく怖かったけど)」
その言葉を聞いた少女は安堵したのか、堰を切ったように話し出した。
親の言いつけで習い事ばかりさせられて普通の子達のように遊ぶことが出来ない事、その所為で友達が出来なく、一人ぼっちだと言う事、それが嫌になって家を抜け出してしまった事、抜け出したはいいが道が分からなくて迷子になってしまった事、溜まりに溜まった心の内が氾濫し、一気に吐き出した。
「ヒック……私だって、友達作って、友達と一緒に遊びたいもん……」
「……ふ〜ん、大変なんだね。よし!それなら俺が友達になってあげるよ!」
「ほ、本当に?」
「うん。一週間ぐらいしかこの町に居られないけど、一緒に遊んであげる」
その言葉に、少女は喜色満面の笑みを浮かべるが、すぐに顔を俯かせた。
「ん、どうしたの?」
「私、遊びたいけど、習い事ばかりであんまり遊べない……」
「ああ、そっかぁ、習い事かぁ……どうしよっかぁ」
少年は、考えを張り巡らせた。
「そうだ!君の家に直接出向かうよ」
「本当?でも、お家にはボディガードさんとか、セキュリティがあるからお家に入れないよ?私がお父様に頼んでもダメだと思う……」
「えっと、もしかして、君って街外れにあいさかでいいのかな?その名前が書いてあるすごく大きな家の子?」
「えっと、あいさかじゃなくておおさかですけど、その家は私のお家です……」
「ああ、そっかぁ〜……でも、大丈夫だと思うよ」
男の子はやけに胸を張って言い張る。
「え?でも……」
「大丈夫、俺を信じて、ね?」