がくにん 1
聳える校舎の前に立ちはだかる長い急勾配の坂。私立葵坂学園名物の坂道である。
今、その坂道は葵坂学園に通う生徒で賑わっている。
そんな何処にでも見られる登校風景だ。。
そんな中、通学する生徒の中でも一際存在感の薄い生徒がいた。
彼の名は『宗像影介(むなかた・えいすけ)』。
身長は170を超えたぐらいの中肉中背で猫背。ボサボサで長い髪、目が髪に隠れていて表情が分かり辛く、ダサいとしか言えない様な容姿である。
そんな彼だが、彼には秘密があった。
彼の正体、それは、今も尚現代に生き続ける忍者だった。
時代錯誤甚だしいが、偽りのない事実なのだ。
忍者といってもナ○トの様にチャ×ラを使って術を使うといった様な非科学的な方ではなく、体術や忍び道具を駆使した陰×ら○モル方面だ。弱冠だが、非科学的なモノも存在するが、今は置いておく。
忍者故に、正体を隠すのは当然の事だ。
彼の主な役割は、葵坂学園の警備である。
普通にちゃんとした警備員もいるが、やはり外までは警備出来ない。故に校外の警備を宗像影介が担っている。
プラス、葵坂学園は全寮制である為、寮内の警備も行っているのである。
今の所、この事を知っているのは葵坂学園でもたった一人、理事長の愛染恵理(あいぜん・えり/25歳)だけだ。
実は、この理事長も最初は影介の正体を知らなかった。
影介は普通に一般試験を受けて、一、学生として入っただけだ。
ならば、何故理事長が影介の正体を知っているかと言うと、実家での仕事の時に、忍者として任務を全う中に偶々居合わせた出張中の理事長にバッタリと遭って(誤字にあらず)しまい、それからは済し崩し的にあれよあれよと言う間に学園の警備員やら理事長の護衛とかやらされてしまっているのだ。
それでも、ちゃんと報酬も出るので、深くは気にしていない。
と、まぁ説明はこのぐらいにして本編に戻ろう。
影介は道の端っこを歩きながら元から薄い存在感が更に拍車が掛かり、影介に気に掛ける人間は誰一人としていない。
まさに、忍者として完璧な程の隠密で完璧なまでの擬態である。
そんなこんなで、学校に着き、上履きと履き替える為に自分の下駄箱を開けると、上履きの上に封筒付きの手紙が添えられていた。
その事実に影介は眉を顰めた。
影介にはその封筒が中身や差出人を見ずともそれが何なのか分かっていた。