がくにん 6
「ふふっ。
まぁいいわ。
彼女のことお願いするわね」
「はい」
そして影介は、件のストーカー事件を捜査する為、理事長室を後にした。
「さて、まだ昼休みの時間はある。どうすっかな……取り敢えず盗撮された場所にでも行ってみるか」
盗撮された場所その@---チア部の部室
「……却下、逆に俺(基本一人の時とか、仕事の際の一人称は俺で、影薄モードの時は僕)の方が痴漢に間違われ兼ねん」
盗撮された場所そのA---グラウンド
状況は主に体育中の彼女(双樹)を撮った物。体操服姿の彼女が被写体に映し出されている。
なんともマニアックな……まぁ、ブルマでないのが救いか?
盗撮された場所そのB---まあ何だ……えーと、うん。
「もうやめようよ、俺」
誰も目に留めない石ころのような存在の影介だが、クラスメイトのイヤンな写真を持って校内を彷徨いていては、あまりに危険だ。
(そういえば放課後、逢坂さんと一緒に帰る約束をしてたな)
教室へと帰る廊下で、影介は根暗キャラを演じながら器用に施策を案じる。
周りから見れば、影介の雰囲気はいつもと変わりないが、彼の頭の中はあーでもないこーでもない、と考えが右往左往である。
(言い出せるかよ、そんなプライベートに関わる事……)
影介はひとりごちて、教室の敷居を跨ぐ。
皆、彼が教室に入ってきた所で気に留めるなど事ない。
しかし、そんな中で、違う反応を見せる者が一人だけ。
影介が席に着くと、隣の双樹は彼の顔を見て、にこりと笑顔を見せるのであった。
温かい、タンポポの綿毛のように柔らかで繊細な表情。
そんな双樹に対し、影介は反射的に頷くだけだった。
しかし、何としても逢坂双樹護衛の任を全うする事を、心の内で固く誓った。
午後の授業も滞りなく行われ、気が付けば、もう放課後。
(さて、授業は終わった。確か、この後逢坂さんから話しがあったなぁ。話すのはいいが、このままここで話すと彼女のファンクラブだか親衛隊だかに背後に気を付けねばならん)
そんな、影介を他所に双樹の方から影介に話し掛けて来た。
「あの、宗像君お昼の時に言ってたあの事……」
(ちょ、ま、今話し掛けられると……クラスの男子が……)
案の定、男子は勿論の事、何故か女子の訝しんだ視線も突き刺さる。