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がくにん
官能リレー小説 - 学園物

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がくにん 36

義隆の脇にいた護衛二人が崩れるように倒れたのだ。目立った外傷はない。

(!……馬鹿な?……ミーが、気付かなかった?)

テイマーJは裏稼業が生業の一族の出身であり、その一族の者だけで構成された組織『サーカス』の中でも十指に入る実力者である。
その自分が気付けなかった。そして倒れた護衛の後ろで、影の様に立つ者を視認しさらに驚愕した。いや、それは戦慄と言った方が良いだろう。

「貴様、っ……あ、貴方は………クラウンB……」

義隆は現状に脳が追い付いていない。実質、そのピエロの男と二人っきりである。

「こんばんは♪『サーカス』の、いいや座長の狗かナ?」

(…そ、んな……四十四分家、最強の男が…何故?)

年齢不詳、出身家不詳、しかしその芸術とも呼ぶ者もいた暗殺技術のため永遠のBを本家に約束された男。
二年前に『サーカス』を抜け、本家が遣った数多の刺客を消し、未だにBを空席にした男。

それがクラウンB。

実力を上からアルファベットで表す組織。その『サーカス』の中で長であるマスターAを除いた実質最強のコード、Bを冠した者が今、目の前に恐らくは敵として立っていた。



ギシッと畳が軋んだ。


それがテイマーJの生涯、最後の感覚であった。

「…?……何、を…」

義隆の声は微風にも掻き消されただろう。それ程の衝撃を義隆は受けていた。一分前まで当たり前にあった義隆の日常は、一人の男によって呆気なく壊された。

「?ああ、実は心臓より肝臓の方がショック死しやすいんダ☆……何だい?死にたくないの?そんなに泣いちゃって〜♪だったら………ウンッ!金庫を開けてくれたら殺さないヨ★」

義隆はコクコクと壊れた様に頷くと震える手で金庫のダイアルを合わせていく。

カチャッ…

義隆は涙やら涎やらで歪んだ顔をクラウンBに向ける。
そこにはクラウンBは居らず、いつの間にか義隆の隣にしゃがみ、金庫の中を覗いていた。

「そうそう…近頃、社会のノートを無くしたよネ?いやぁ、サスガ生徒会長♪文字が綺麗でマネるのは大変だったヨ★」

義隆の眼には茶封筒に自分の字で書かれた二文字が飛び込んできた。


『遺書』


「ヒィィッ!……グッ…」

恐怖で支配された義隆の脳内に衝撃が響き、気を失った。

クラウンBは義隆の手にサファリ男を刺した、何処にでも売っているナイフを上手く握らせた。そして金庫の中に茶封筒を入れて閉め、義隆を避けるように部屋に灯油を撒くとジッポーに火を点ける。

「ダイジョイブ♪すぐに助け出されて、軽い火傷で済むヨ☆…マァ、一酸化炭素中毒で良くて半身不随、悪くても植物状態だから、キミのパパの力で『生きて』いられるからサ★バイバイ♪」

クラウンBはジッポーを畳に落とすと、自信の影に溶けた。




救急車や消防車のサイレンを聴きながら、クラウンBは携帯を取り出すとリダイアルする。

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