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がくにん
官能リレー小説 - 学園物

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がくにん 31

影介は顔に残った双樹の温もりと、耳に残った『大丈夫』を反芻する。それは気恥ずかしくも、これまでに影介が負った心の傷を優しく癒していった。

(………くくっ。じゃあ、甘えん坊な俺は昼休みまでサボるかな…)

ゴロンとベッドに横になった影介は、自然と顔が綻んだ。



四限の授業が終わり、昼休みを迎えた教室で瑪瑙は焦燥に駆られていた。
本当は一限が終わったのと同時に保健室へと向かいたかったのだが、クラスメイトからの質問攻めに遭い、席を立つことも出来なかった。普段の瑪瑙ならば強行突破も辞さないが、これから同じ教室で共に学ぶ者達を無碍にも出来ず、現在に至る。

今も弁当を共に食べようと持ち掛けられていた。そうなれば昼休み中も解放されないだろう。

(困った。手洗いにまで着いてこられては、影介様の元へ行けないではないか…)

質問も影介との関係や趣味嗜好、挙げ句は近辺の遊技場や甘味処など尽きる気配がない。
これでは駄目だと教室を見渡すと、一人の男子生徒が目に付いた。制服を着ていなければ若手教諭だと思っていただろうその男はこのクラスで唯一、自分に興味を示していない。

瑪瑙は藁にもすがる思いで、席を立つとその男へと近づいていった。

「「あっ、そいつは…」」

と先程まで質問をしていた者達が揃って口に出したが瑪瑙は気にとめない。
その男は瑪瑙が声の届く範囲に来ると読んでいた本から視線を移し、口を開いた。

「…何か?」

「読書の邪魔をして済みませぬ。物を尋ねたいのですが…えっ、と…」

瑪瑙はチラリとそれまで男が読んでいたハードカバーの表紙を見る。洋書で瑪瑙には題名が分からなかった。

「酸漿…酸漿、戒だ。よろしく」

「鼎瑪瑙と申します。酸漿殿、保健室の場所は何処でしょうか?」

この質問の後であれば誰も、自分が保健室へと行くのを妨げる事はできないだろう。

「ふむ…生憎、この学園には見取り図の掲示がされてない。………案内しよう。」

「しかし…」

「構わんさ。男は、タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない…とね」

戒はトントンとハードカバーの表紙を叩き、楽しそうに言った。
疑問符を浮かべた瑪瑙に構わず戒は本をしまうと、教室の出口へと向かった。慌てて追いかける瑪瑙。クラスメイトは瑪瑙への興味よりも戒との関わり合いを避ける事を選択したようだ。

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