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がくにん
官能リレー小説 - 学園物

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がくにん 30

過去を思い出しつつ心情を吐露した影介は、知らず双樹を抱きしめる腕が震えていた。その震えは無論双樹にも伝わる。

「……大丈夫ですよ……」

昔の出来事に意識を傾けていた影介は双樹の囁きと首筋に回された腕の感覚で我に帰る。すると影介の目前には大写しとなった双樹の顔があり、次の瞬間には再び二人の唇が重なり合っていた。




「過去にどんな罪があったとしても、未来でどんな罪を犯すとしても関係ありません。今、逢坂双樹が感じている宗像影介という人こそが私の真実ですから……」
名残惜しそうに唇を離した双樹は影介の耳元で優しくそう囁いた。

「……影介君が過去の罪に苦しんでいるのなら私にもその苦しみを分けてください。影介君が未来で罪を犯すのなら私も一緒にその罪を被ります。」
そこで一端言葉を切り、影介の目を見詰める。

「あなたはもう一人じゃないんですよ……?私は……いつだって影介君の傍にいますから……」

双樹の溢れんばかりの愛情が穏やかな微笑みに変わって影介に向けられる。
その微笑みを見た瞬間、影介が今まで心の奥底に凍らせていた感情が溶けた……。
他人とは必要最低限の関わりしか持たない事とは、同時に誰からも理解されない事でもある。今まではそれで良いと思っていたし、寂しさも押し殺せば済む話だった。

しかしこうして自らの寂しさを穏やかに包み込まれたその時、影介は今までに感じた事の無い安らぎを覚えていた。そしてその安らぎは涙となって影介の瞳から溢れ出す……。

「ありがとう双樹……ありがとう……」
影介は双樹の背中に手を回し、強く抱きしめた。
体中で感じる双樹の温もりと微かに伝わる双樹の心臓の鼓動が影介に更なる安らぎを与える。

「もう……お姫様を守る忍者さんがお姫様に甘えてどうするんですか?」
咎めている様に聞こえるが、その口調は穏やかで慈愛に満ちていた。

すると、ふと双樹はイタズラを思い付いた子供の様な表情を見せた。そして……


「しょうがないですねぇ〜。……それっ!!」
「もぷっ!?」


……双樹は何をしたのか?


察しの良い方は解ったと思うが、自分に泣き付いている影介の顔を自らの胸元に押し付けたのだ。双樹の奇襲とも言える行動に完全に虚を突かれた影介は何とも間抜けな声を挙げる。

「っ!んん〜…ん、」

「ふふっ♪」

「…はぁっ!」

一瞬、双樹の心地良い弾力に呆けたが、状況を理解した影介は身を放す。

「な、何…を?」

「もうっ…影介君も男の子なんですから、もっと甘えてくれて良かったのに…」

影介は顔の火照りの所為か、言葉を紡げない。

「大丈夫ですよ、影介君。大丈夫ですから……じゃあ、一時間目も終わりますから私はクラスに戻ります。また、甘えたくなったら言って下さいね?ふふっ♪」

楽しそうに微笑むと双樹は保健室を出て行った。

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