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がくにん
官能リレー小説 - 学園物

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がくにん 28


そこで一度言葉を切ると俯いて黙ってしまう。
しかし意を決した様に影介の顔を見詰めると

「ただ、誰よりも近くでその人を……影介君を感じていたい。そして影介君には誰よりも近くで私を感じて欲しい。ただ、ただそれだけなんです……」


……真昼の陽光がカーテン越しに射す保健室を沈黙が支配する。
影介は正直戸惑っていた。確かに以前告白はされたが、双樹の想いがここまで深いとは思っていなかった。いくら恋愛に鈍感な影介であってもこれ程はっきりと気持ちを伝えられれば気付かない筈も無い。

……本人が認識しているか否かは別として、影介自身も間違い無く双樹に対する恋慕の気持ちはあった。ただ、影介は忍者であり双樹は任務にて護るべき対象。
影介の中で忍者としての感情と一人の男としての感情が激しい葛藤を起こす。
そんな影介の心の葛藤を感じ取ったのか、どこか申し訳無さそうな表情を浮かべながら双樹が続けた。

「……私の我が儘が影介君の迷惑になるのは解っています。でも……それでも、私も気持ちを抑えられないんです……」
双樹も影介の立場はうっすらだが理解している。同時に自分の感情をぶつける事がどれだけ影介を困らせるかも。
ただ、影介を見る瑪瑙の瞳。自分と同じく影介に想いを寄せ、自分よりも影介を知る存在が双樹の前に現れた事が双樹に少なからずダメージを与えた。
ただでさえ恋敵の出現に焦りを覚えるのに、その恋敵は自分が知らない本当の影介を良く知っている。いけないと判っていても嫉妬の念が胸の奥から湧き出して、不安となって心を塗り潰す。
瑪瑙は何も悪くない。そんな事は重々理解している。でも抑えられない複雑な感情。
終いには一方的に自分の感情を影介にぶつける始末。双樹は自身の浅ましさに情けなくなり、その両の瞳からは涙が流れ出した。
「……ごめんなさい。こんな事を言われても迷惑ですよね……。私は教室に戻りますから……今の事は忘れてください。」

影介に背を向けて扉へと歩き出す双樹。

「……っ!」
影介の体ははほとんど無意識に動き、気付けば双樹を後ろから抱きしめる形で彼女の歩みを止めていた。

「影介……君?」

困惑しながら影介の方へ首を回す双樹。影介の目には当然双樹の表情が映った。
……涙を流しながら自身を見る、今にも消えてしまいそうな儚さを纏った表情を。


……どうしていきなりこんな行動に出たのか自分でも解らない。だが影介はさもそうするのが当然であるかの様に、涙で僅かに濡れた双樹の唇に自らの唇を重ねていた……


最初は影介からいきなり唇を重ねられた事に目を見開いて驚いていた双樹も、やがて自ら目を閉じて唇から伝わってくる自身の想い人の温もりに身を委ねた。

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