がくにん 25
そして影介は早速実行に移した。
「あ、あの〜先生、少々宜しいでしょうか?」
「ん?え〜と、宗像君だね。何かね?」
「えっと、今少々体調が優れないので、保健室に行ってよろしいでしょうか?」
さぁ、勝負!
「む、大丈夫かね?遠慮せずすぐ行って来なさい」
「はい、失礼します」
よし、此処までは目論み通り。
その後も、油断せずに、本当に体調が悪いかの様に、フラフラと歩き出す。
ところがどっこい、世の中そんなに甘くは無い様だ。
「先生、宗像君の足取りが覚束無いみたいですので、私が保健室まで付き添おうと思うのですが、宜しいでしょうか?」
影介の付き添いを申し出たのは、学園でもトップクラスの人気者、逢坂双樹だった。
な、なにぃ!?その発想はなかったぞ。
思いもしなかった横槍に、影介の思考回路は混乱した。
ん、待てよ?そう言えば彼女ってクラス委員長でもあったな。もしかしてこれって自然な流れ?
双樹がクラス委員長だった事に記憶からすっかり抜け落ちてしまい、影介の立場を余計に悪くさせる結果となった。
ただ彼女は、クラス委員長という大義名分がある為、多少男子達に睨まれはしたが、どうにか授業を抜け出す事ならすんなり上手くいった。
だがしかし、双樹と共に教室を出た後、クラスメイト達が聞きたかった質問を双樹からされていた。
「影介君に聞きたい事があるんだけどちょっといいかな?」
影介の呼称が、宗像君から影介君へとチェンジしていた。
「何でしょうか?」
「影介君、その丁寧な話し方じゃなくて、影介君本来の話し方で話して欲しいな?」
「ああ」
何故だか、今の双樹の言葉を否定出来ない凄みがあるのだが……
「影介君が体調不良っていうのは、方便ですよね?」
「ああ、クラスの中の雰囲気が重苦しかったから抜け出した」
「やっぱりそうでしたか。それで、今日転校してきた鼎さんとはどういう関係なのかな?」
双樹は変化球を交えず、ストレートに質問してきた。
「よく言う言葉であれば、幼馴染み。堅苦しい言い方にすると、同業者って事になる。つまり、彼女は俺と同じ忍者って事」
「そうだったんですか……それにしても、鼎さんに随分と慕われているんですね?」
「まぁ、彼女の両親って結構忙しい人達だたから殆ど俺が構ってたね。それなりの親しみを持っててはくれているんじゃないかな?昔の彼女は人見知りが強くて、尚且つ寂しがりやだったから一番親しかった俺の側からなかなか離れようとしなかったね。彼女の両親がいない日は、寝る時とか風呂に入るときとかも殆ど一緒だったかな?どちらかというと兄妹みたいな関係だと思うよ」
瑪瑙について過去の思い出に花を咲かせながら、瑪瑙との関係を話した。
しかし、影介は自分の言った失言に気付かないでいた。