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がくにん
官能リレー小説 - 学園物

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がくにん 19


朝の日課は決まっている。まず忍びに不可欠な筋力。

といってもボディビルダーやレスラーのような余分な筋肉は必要ない。

ベッドの向かいの壁の梁に片手をかけ、懸垂をする。片腕五十回を3セット。
次に片足立ちになりスクワット百回をこれも3セット。
これを大体、十五分でやる。



「……98…99っ……ふっ、100…と………はぁ〜」

影介が深く息を吐き、時計を見る。

「六時、五分前……うしっ、予定通りだ。」


この後、影介はランニングに出る。その為に財布を持ち、部屋を出た。鍵を締めるのも忘れない。

エレベーターを使い、寮のエントランスに来た。
始業時間が八時四十分である葵坂学園生で、この時間帯に起き出し、寮のエントランスに来てる者は一部の例外を除いて、いない。
新聞配達のバイトをしている者や朝練がある者、そして影介のように私用で早起きしている者達である。


その日はエントランスには影介を除き三人いた。
二人は朝練のため、すぐに外へ出て行ったが、残った一人は…

「おはよう、宗像君…」

ソファーに深く座り、傍らのテーブルに自分の部屋から持ってきたのであろうマグカップを置いた青年が挨拶をした。

酸漿戒(ホオヅキカイ)。影介のクラスメートである。つまり正確に言えば、少年と呼ぶべき年齢であるのだが、後ろへ撫でつけた髪と眉間の皺の為に二十代に見えてしまう。
影介が朝、ランニングの為にエントランスを通るたびに同じソファーに座り、マグカップに注がれたコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる姿を目撃できる。

「…おはよう」

影介は軽く頭を下げ、挨拶を返す。いつもはこのまま別れるのだが、たまに会話に発展する。

「宗像君。もし君がリストラされたとして、辞令を渡した上司を憎み、その上司の娘を襲うかい?」

会話はいつも戒が突拍子もない質問をする事から始まる。

(まぁ、一言でいえば…変人なんだよな…)

その珍妙な発言の為、クラスでは影介とは別の意味で孤立していた。が、影介はあまり深く介入しない戒という男の気質を割と気に入っていた。

「…その事件なら知ってます。たしか…関西の方の事件でしたよね?」

「そうだ…」

37歳の男が起こした、誘拐強姦事件である。テレビでは今、その話題で持ちきりだ。
おそらく彼が今、目を通している新聞に動機が書かれていたのだろう。

「本当に、怖い事件ですよね。僕は男ですから関わる事はないですけど、やっぱり婦女子の方達を考えると、居た堪れないですよ」

「確かにな。だが、加害者としてなら関わることはあるのではないか?」

「酸漿さん、僕をそんなに犯罪者にしたいんですか?僕の中では、数ある犯罪の中で、強姦というのが一番嫌なんですよ。それは殺人よりもです」

「何、今のは冗談だ。君はそんな事をする大馬鹿者ではないと分かっているからな。でも、まぁ君がちゃんとした良識ある人間であるという事が再確認出来たよ」

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