がくにん 13
問題はない。できれば一人きりの所を狙いたかったが所詮は平和ボケした日本の高校生二人だ。しぐじることはないだろう。報酬で何をしようか考えた時である。
コンッコンッ!
左後部の窓ガラスが叩かれた。
「「っ!?」」
誰一人として気づかなかった。四人の間に緊張が流れる。
外を見ると先ほどターゲットと話しをしていた青年だった。
青年は腕を振り上げると乱暴に窓ガラスを殴りつけた。
…
……
………
「はぁ、弱すぎるよ君達。ま、どっかの戦場で食いっぱぐれた傭兵かなんかだろうけどさ。こんな危ない物は没収!」
珠久は車内でノビている男達から自動小銃を取り上げる。
「っ、う〜…」
呻く男達に珠久は言った。
「私に歯もたたないようなら彼等に関わっちゃいけないよ。なにせ『あの宗像』が相手なんだからさ。さ〜て…お家へ帰ろっと!」
夕日が珠久の影を長く伸ばしていた。
----その頃の影介と双樹----
(なんか、空気が重いな……)
「……ええっと、聡い君の事だから何かしら勘付いると思うけど、俺はね普通の人とは少し生まれと育ちが違うんだ」
「……はい、影介君が他の方達とは違った雰囲気があるのは、なんとなくですけど気付いてました」
「そう……君に最初に逢った時は言えなかったんだけど、俺の家系は戦国時代の頃から伝わる、傭兵にして忍者の一族、『宗像』の末裔なんだ。今でもウチの家系はその筋の人達にとって、名が知れててね、バレると皆に迷惑掛けるから……そんな俺でもやっぱり普通の生活が送りたかったから、自分の劣等性を演じる所か一人称を偽ってまで学校に通ってるんだ」
今まで隠していたのが心苦しいのか、影介は心此処に在らずといった様な表情を浮かべる。
「実はね、今君の周りで起こっている異常も知っているんだ」
「え!?」
その事実に双樹は驚いて声をあげた。
「そ、そうなんですか?」
「うん。全ての事情は理事長から聞いている。今まで黙っててゴメンな」
「い、いえ、影介君が謝る必要はどこにも……」
「本来なら君とこうして表立たずに、影ながら支えるべきなんだ。俺と居るといつかは必ず事件に巻き込まれると思う。だから俺には近付かない方がいい。君を危険に晒したくない為に、さっき学校の屋上で君の交際を断ったのはその為なんだ。でも、君の事は絶対に護る。宗像の誇りに懸けて……」