がくにん 11
「私…すごく嬉しかったんです。それまでは父も母も期待はしますが応援された事などなくて……ですから今度は私が応援しようとチアリーダー部に入ったんですよ。」
「…なるほど。」
「それにしても…同じクラスになった時は驚きました。雰囲気がまるで変わってましたし…ただ珍しい名前でしたので…ずっと見てたんですよ?」
「はぁ、それはどうも。」
影介も年頃の男である。美少女からそんな事を見つめられて言われたらドキッとしてしまった。が、顔には露ほども出さず相づちをうつ。
「あの、宗像君、昔みたいに私の事名前で呼んで貰えないかな?あと、宗像君の事も名前で呼びたいな?」
その問いに少し考える仕種を見せ、すぐに答えた。
「……うん、いいよ」
「ありがとう♪」
名前で読んでもらえる事がそんなに嬉しいのか、喜色満面の笑みで返す。
「別に礼を言われる程の物ではないと思うんだけど……まぁいっか。ところで、話しが変わるんだけどちょっといいかな?」
「はい、なんでしょう?」
「ちょっと騒がしくなるかもしれないから端によってて」
「えっ?」
双樹の返事より速く、袖に隠していた苦無を取り出し近くにあった、さっきまでなかったダンボールに投げつけた。
「出てこい。変態」
そう言うのとほぼ同時にダンボールからスーツ姿の青年が出てきた。
「はっはっは、ボンジュール、こんばんは、流石は影介君、よくぞあの某スパイも使っている完璧なカムフラージュをみやぶったね」
パンパンッとスーツの埃を払い、軽く拍手をする変態、もとい青年。
青年の言葉に影介が頭に手を当てため息をつく。
「で、また俺の勧誘か?」
「そう思っていたのだが甘酸っぱい青春の一ページをみて気が変わってしまってね」
少し間をあけ
「そうだ、今回は私も甘酸っぱい青春の一ページに加わろうと」
「帰れ!!」
苦無を投げる影介と片手で苦無をつかむ青年
「はっはっは、そう照れることはないじゃないか。言うだろう思い出は人が多いほど良いと」
ギャーギャーと言い合いをする二人を見ていた双樹が口を開いた。
「あの〜…そちらの方はどなたなんですか…?」
「あぁ、ごめん。こいつは…」
「私は影介君の友人にして中務コーポレーション社長、中務珠久、以後お見知りおきを麗しのお嬢さん」