香港国際学園〜第二部〜二章 87
島本甲太郎は一応、玄人に聞かれた能力者以前の話をしてみる事にした。
それは彼自身が入学時に提出した履歴書、学園側の調査書類に記載された内容の手短な抜粋であった。
「…という具合かな?」
「NO…平和と水もタダではなくなったのだな日本人よ?」
かいつまんだ内容は、平凡な少年が突然の能力覚醒により異端児として(以下略)この学園では珍しくもない、モブキャラ並の一例であった。
しかし今まで他の生徒のそうした部分に触れた事がなかったのか、玄人は驚きを隠せなかった。
「取り敢えず何かと『日本人め』って態度は止さないか?世間知らずの出稼ぎ外国人じゃあるまいし?」
「うぐ…。」
図星に近い所を突かれた玄人。
日本の知識と言えば武術と歴史伝承、多少の社会情勢は知っているが…紛争国の現地語で地元贔屓な内容のラジオ番組を携帯無線から聞きかじった程度。
それも能力者基準ではない一般人向けの情報ばかりだ。
「超常能力者に国籍なんて関係ない、それはキミの方が詳しいんじゃないのかな?」
「やれやれ…貴公は委員長とは違った意味で厄介な男だな…。」
そんなスタジアム内喫茶店のVIP席での雑談…。
備え付けモニターではA組vsF組のスタジアムには試合参加生徒が整列、試合前トークバトルが繰り広げられていた。
「ヴィン…この日傘…やたら重いんだけど?」
「煩い黙れ雌豚、常人基準にして一屯、貴様が一瞬でも気を抜いた瞬間、超常能力者とて圧死するぞ、精々気をつけるが良い我が主。」
吸血鬼ヴィンセント・ラクレインを、彼が『苦手ではないが大嫌い』と称する直射日光から守るべく小柄な女子高生、F組マネージャー御堂凛がヨタヨタと巨大な日傘を抱えていた。
『アイツ『主』って呼びながら…何一つ敬意払ってる様子がねぇ…。』
『すげぇぜ…パねぇぜ…とんでもねぇドSだ!』
観客席でそんなどよめきが起こる中、A組にも似たような問題児がいたりする。
「ヴィンセント君でしたっけ?か弱い女性にその様な仕打ち?いち男子としてどうかと思うんですが?女性の尊厳とか考えた事はないのでしょうか?」
そう宣う辺里影汰は、人間椅子状態のA組マネージャー栗原華奈美に腰掛け足組みながら、時折その尻(ノーパン)に乗馬鞭を叩き込んでいた。
「えったちゃん。君もそれはどうかと思うんだけど・・・」
そう言ったのは椅子にされた華奈美ではなく、我らがアイドルひかるちゃんこと桜川光樹。
最近登場ご無沙汰だが、その萌えアイドルっぷりは増しはすれ衰える事はなく、清楚なセーラー服も彼女(?)にはピッタリである。
指摘された影汰の方は怒る素振りもなく、華奈美の尻に鞭をピシャリ。
因みに、椅子扱いの華奈美に発言権は無いとばかりにボールギャグで口を塞がれ、『モゴモゴー!』としか言えない次第である。