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香港国際学園〜第二部〜二章
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜二章 85

誰もがそのデュエルに見入っていた。

―私闘スタジアム結界制御室―

それこそ私闘スタッフも同様…ただし管理運用セキュリティを保てる範囲内で…である。

『…凡俗共が…!』
『…魔神ドノ…?』

時は当のデュエリスト達が互いに口上を叩き付けていた辺り、僅か数十秒前に遡るだろうか、モニター画面に僅かなノイズが走った。

「今…女の顔が…?」
流石にそうした微妙な変化に敏感な、若手スタッフが手早くマウスを操作、点検プログラムを走らせた所、各種数値に異常はない。

「気をつけろ?フーリガン学生のハッキングなんて珍しくないんだからな?」
かく言う年嵩のスタッフ、以前の『ダメージ現実化事件』はそういう事で説明してあるらしい。
彼は内心…同志・西珠久からの指示は受けていない…と考え、通常のネット犯罪として記録を指示した。

―スタジアム―

その結界管理室を通したノイズは、大阿門D玄人から過去の記憶を呼び起こしていた。

「ユン…ハ…ユンハ…だと?」
目の前に対峙した東雲花鈴…その小柄な女生徒の姿と、少年期の玄人と浅からぬ縁を持つ少女との姿がダブった。

疲労が呼んだ気の迷いかと認識する僅かな隙が、居合一閃の構えを刹那ばかり遅らせた。

音もなく…厳密には別枠の可聴域でルーファスの奏でる、古代竜さえも追い詰めた殺人音波に、玄人の全身の血液が沸騰。
ほぼ同様の業を持つ彼はどうにか侵蝕を防ぐ。
そして最早居合と呼べる代物ではない苦し紛れの斬撃、辛うじて刃筋を整えた一撃だけでも行幸と呼べよう。

「誰でも構わんッ…レイナ君の回収をッ…!」
玄人は花鈴に多少の手傷を負わせながら早口でインカムに叫び、なるべく雪の厚い場所を選んでレイナを放り投げた。

間合いを計り直す花鈴のタイツの脇腹、金属繊維の破片と共に淡い血煙が舞う。
しかし同じく先程のすれ違いで彼女が振るった細身の両刃剣、東雲家秘蔵の魔剣は大阿門D玄人の右肩を抉っていた。

魔剣の効果か凍傷を超えた冷気、血液中酸素さえ毒性の酸と化して傷口を蝕む。
尚も花鈴は精神力も限界スレスレのスケーティングで、玄人にヒット&アウェイを繰り返してくる。

「執事はッ…?」
身軽になった花鈴に気付く玄人。
そこは手練れ、紙一重で回避しながら苦痛を堪え、左手で反射的にホルスターからワルサーを抜く。

安全状態は撃鉄を戻し、初弾の重いトリガーに安全機構を任せたデコッキング状態。
弾薬は先の逃走中に補充済み、弾倉8発と銃本体に1発のコンバットロードだ。

右目で花鈴を警戒、負傷した右手の脇差で彼女の剣を捌きつつ、左目は射撃能力者並の索敵モードに切り替えた。

ロックオン警報に似た殺気、高台の岩場。

サックスを背に回した姿でバリケードポジションを取り、二挺拳銃を構えたルーファスに3発の速射。
やはりダメージで先程の様な精密射撃は望めず、ヘッドショットを狙った初弾の照準がガク引き気味に反れた。

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