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香港国際学園〜第二部〜二章
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜二章 76

「アタシの地元は…何て言うか合理化一色よ。」
南田は下着姿で髪をブローしながら、その地元とやらを語った。
人工受精、数年単位の保育カプセルによる育児で睡眠学習、10歳そこそこで社会人…等々。
「道徳の概念は地球と似てるけどね。」
そして超常能力は神の真似事にあらず、人の進化形態だと付け加えた。
南田の物言いは平原に比べると直球さに欠けたが、地球上の人間ではない…という事か。
まぁこんな学園だし宇宙人ぐらい居るかな?と納得した蒼流が横目に、南田が部屋着のキャミとハーフパンツに着替えた姿を認めた。

やはり服を着て貰って漸く落ち着く、そういえば蒼流が私服姿の南田美波を見たのは初めてだ。
お世辞の一つでもと思った所、更なる奇行にそんな気分は失せた。

南田が冷蔵庫から出した風呂上がりの牛乳、その紙パックの日付は明らかに賞味期限切れ、にも関わらずストローを挿し、旨そうにちゅごごご…とすすった。
「あ…ははは…胃腸の作りとか、味の好みとかも、地球人と、違うんだ?」
「あによ?アンタ珈琲牛乳派?」
「いや、古い映画で見たエイリアン刑事がソレと同じの好物で…。」
「コレ?普通の白牛乳だけど?」

南田、風呂上がり至福の一時から怪訝な表情、恐る恐るその紙パックを確認。

暫しの沈黙、そしてトイレに…以下略…。

戻ってくるなり南田は涙目で蒼流の襟首引ッ掴み頭突き一発。
「気付いてたんなら教えなさいよっ!」
「へぅう…てっきり腐れてから飲むのが南田さんの常識かと…。」

何かもう、さっきまでのCOOLな雰囲気ブチ壊しで夫婦漫才を演じる二人。

そこへ烏の行水で風呂から上がってきた平原が、ガコンガコンと頭突きの嵐に揉まれている蒼流に助け船を出した。
「ハハハ、その辺にしといてやれよ美波?」

「むぅ〜?」
南田の方はアヒル唇を尖らせ、再びトイレに駆け込んでいた。

「世間一般『お前の事は良く知ってる』なんて抜かす奴ぁ嘘ツキだ!」
平原はゾンザイに体を拭き、ランニングと縞パンだけ着けて蒼流に宣言した。
「正直に言おう!全然わからねぇ!」
「はぁ!?」
蒼流が本気で疑問の吐息を吐き出す姿、平原は満足気。
「人見知り上等が蒼流の本音ならそれで良い!」

蒼流は逆説的な誘導尋問ではないか?と平原を疑った。

南田が下腹を擦りつつトイレから戻って来た。
「解らなくても、近付く事は出来るでしょ?」

テレパシー能力に対するトラウマ、心を読むまい操るまいと誓った仮面。
やたらと話好きな自分を演じていたのではないか、それが却っていつしか孤独の殻を形成していたのではないか、せめてこの二人の前では、仮面を脱いでも良いではないか…。

孤児院を出て以来、彼は初めて義父である北側才英以外の前に素顔を晒した。
神経質気味に痩せてはいるが、整った笑顔、朱と蒼の瞳に薄く涙が零れる。
「お風呂、いただきます。」
そして笑顔で頷くお子ちゃまーズの前に、素肌を晒す、解放感、家族として、三つの心が、今一つに。


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