香港国際学園〜第二部〜二章 63
がーっとまくし立てる主の頭を押さえつけてそれ以上の接近を許さない下僕。見てて微笑ましいが立場が逆転している事に気付いていない半熟主。彼女が下僕の上に立つ日は来るのであろうか!
……来ないかもね
「コラー!!! 勝手なことゆーなー!!!」
既に日課となった主いぢめを楽しみつつ、端整な口の端を歪めながらくつくつと笑う忠誠心ゼロの僕。
次はどうやって弄くり倒そうかと頭の中で思案していたその時、彼の感覚が一つ懐かしい気配を掴み取った。
「……ふん。」
呆れと若干の波乱への期待を心中に抱きながら力の制御に意識を向けるヴィンセント。
「…それに私の方が主であるはずなのにここまでイジられるのは納得いかないのさ! ってあれ?」
自分の意見をひとしきり述べ、自分の世界から戻ってきた凛。しかし先程まで目の前にいた筈の従者は既に居なかった。
いわゆるエスケープアウト、わざわざ霧化まで使う程の手の込みようである。
「っあのバカ従者―――!!!」
日が沈みかけている夕暮れ時、半熟主の魂の絶叫が体育館を揺るがした。
学園の敷地の一画にある屋外休憩スペース、夕日が見えるベンチに座っている影2つ……久しぶりの出番の光樹と影太である。
「……なんだかすんごい失礼な事を言われた気がする…」
「そういうものには余り気にしないほうがいいですよ? でもこうやってのんびりするのも良いものですねぇ」
そう言って大きく伸びをし、体から眠気を飛ばす影太。だが光樹の表情は少々曇っているようにも見えた。
「どうしました? 遂にアッチの方がマンネリ化して奴隷ズの皆さんに捨てられたのですか?」
「いや、別にそんなことは……こっちもそうならないように手を変え品を変え……って違うよ!!」
同時にどこに忍ばせたのか分からないスリッパで影太の後頭部をひっぱたく光樹。
「むう……だんだんツっ込みが激しくなってきましたね…」