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香港国際学園〜第二部〜二章
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜第二部〜二章 60

それすらヴィンセントには幾つもの枷となり、重く圧し掛かる。

何故だ、何故そんなに穏やかにいられる、疑問が離れない。

自分が殺した、もっと他の方法で救えたはずなのに。
考えれば考える程に分からなくなる。何故、何故。頭がクラクラしてくる、もう自分がどういう風に立っているかすらも分からない。
永遠とも思えるような長い時間はアリスと呼ばれた少女の二度目の微笑みで終わりを迎えた。
不意に白んでいく視界、制止の言葉を言う間も無くヴィンセントの意識は完全に霧散した。

「…ン……ヴィ………ヴィン!、ヴィンってば!」
凛の呼ぶ声でゆっくりとヴィンセントの意識が戻る、そこは先ほどの時間が停止した空間などではなく、クラスメイトの騒ぐ声が響く体育館であった。

「ねえ、ヴィン大丈夫? 血が出てるよ?」

「……ああ」

凛の言葉で初めて気が付いたのか、血の涙が伝った2本の線から真っ赤な雫が滴り落ちている。
傍ら理不尽貴族の新兵器…ガングレイ○だかガ○ダムハンマーな感じでブン回されていた棺桶からは、二本どころか幾重にも…胃液らしき酸っぱいアレが『おえろえろえろ』と流れ出していたが『中身』の不幸少女ぶりに応えてスルー。
『ハ…ハーイル…ヴィンセントぅ…ううう…うえろえろえろ』

「先程から、どこぞで何者かが『賞味期限切れの弁当』が如し臭気を放って…」
「お弁当はどうでもいいのっ!さっきからやっぱり『嶺那ちゃんの姿が見えない』けど…そんな『お笑い属性の事件』より私はっ!」
凛はその愛苦しい顔をクシャクシャに歪め、ハリウッド映画のヒロインが如しヒステリックぶりで、立て掛けられた棺桶に小さな拳を何度も何度も打ち付けた(うぼぇえろえろえろ)。

「私は!ヴィンの身体が心配なのっ!」
はしっ…と白樺の小枝を思わせる凛の細腕を制する、美麗なる吸血鬼。
「物に当たるのは…レディの振る舞いとして好ましくないぞ?主よ?」

己の瞳に流した血潮を指先で拭うと、それは手品の様に消え失せる。
そして懐からふわりと取りい出した絹のハンカチーフで、薄ら出血した凛の拳を撫で清めるも…その紳士的な仕草は尚更『主』のご機嫌を損ねたらしい。

40sにも満たぬウエイトが、リノリウム張りの床を荒々しく踏み鳴らした振動で棺桶が倒れガラゴロと転がる(うげぇえれえれえれ)。
「じゃあ『主の質問』に答えて…ヴィンセント・ラクレインは『お日様の下』で何分間戦える…いえ『無事でいられる』の?」

自然光でないにせよ…この道場の照明ですら『不快』な筈。

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