香港国際学園〜第二部〜二章 43
次の試合相手となる1−Aの戦力情報、注意点、それの対策と程よく纏められた情報がクラス全員に伝わっていく。
そんな雑談のない教室を勢い良く開いたドアの音が会議を強制的に中断させた。
「こんちゃーっス! ヴィンセント・ラクレインさんはこちらにいらっしゃいますか〜!?」
皆が呆気にとられる中でヴィンセントだけはいつもと変わらない美しい所作で荷物を受け取り、サインを済ませる。
「またのご利用お待ちしてます。あじゃこじゃっした〜!」
配達屋のあんちゃんが元気良く去っていき、教室が気持ち悪い間で支配されるがはっと我に返った凛がクラス全員の心境を代弁した。
「何、今の……?」
そんな凛の独白に気にした様子もなくヴィンセントは渡されたケースを開いていく。
ケースの中から出てきたのは長大なオートマチック2丁、その二つの銃が禍々しく光を反射していた。
「ハーイル!ヴィンセントぉ!すげー!特注ッスかぁ?」
かぽんっ!とヴィンセント専用お弁当箱(棺桶)の蓋を弾いて身を乗り出す元・不幸娘…最近、吸血鬼用『非常食』『携帯食』を経て『お弁当』まで昇進した如月嶺那。
彼女も一応、銃使い能力『トライガンナー』の使い手だけに目利きは出来る…現在、嶺那も修理から戻って来たガバメント系のカスタム拳銃、インフィニティ・ストレイヤーヴォイト(通称SV)を二挺携帯していた。
それを含めて『カスタム銃は最低グレードでも、加工費だけで、メーカー純正量産品の倍額』というのが通説。
例外もあるが…能力者のエモノと、実力や素質の高さは比例する…最たる例が神樹天地の『鋼より鋭く硬く尚且つ軽い木刀』である。
本人が『実力に見合わない』と能力に封印を施した状態で、60mm迫撃砲弾に耐えるスタジアムの石畳を砕く代物(百太郎の使う一般的な学園仕様の刀、『超硬度菊一文字』は折れた)。