香港国際学園〜第二部〜二章 42
「な…何なのこの脈絡の無い暴力…?」
「貴様らの言う所、カレシカノジョのスキンシップの積もりだ。」
命懸けかよ。
この世に成らざる美丈夫に一目ボレ、封魔の札で強引にモノにした…までは良かった。
それが人外というか『魔人』そのもの…貴族を名乗るだけあって『一応』ジェントルマンなのだが、行動のひとつひとつが『魔人基準』なのである。
悪気の欠片も無く罵詈雑言を吐き、命に関わる程の『スキンシップ』を平然と行う。
べしゃっと凛を道場の床に放り出し、血と涙と鼻水その他を溢れまくらせた顔面に土足を乗せるヴィンセント。
「で…ヴィン?貴方はどうして『カノジョ』にして『主』である私を踏んづけてるのかな…げふ?」
ハタから見れば、ドSなカレシ以外の何者でもないのだが、ヴィンセント自身に悪気は無い。
「色々この学園を見聞していてだな、男宿で日本文化を教わった。」
「どんなん?」
「うむ『ゲコクジョー』と言ったか、サムライの主君に対する『日頃の恩返し』だそうだ。」
くれぐれも言っておく…彼に悪気は無い、全く無いのだ。
彼も本来は『人間基準』の能力者に換算してSランクの『人外』であったが…倶利伽羅の陰謀?で能力の大半を封印されてしまった。
元のチカラを取り戻す為、倶利伽羅を追って学園に潜り込んだまでは良かったが、更なる封印…楠凛の使い魔にしてカレシ…という条件まで加わり…マァそれはそれで楽しんでるようにも見えた。
「ほらほら、カノジョいじめもそこら辺にしときなってあんまりやり過ぎると凛ちゃん怒っちゃうぞぉ?」
「それに下克上は「恩返し」じゃない。謀反……反逆だ」
凛を更に踏みつけようとドSモードを発動させようとするヴィンセントを制止する小次郎と武蔵にヴィンセントは薄い笑みで返答し、凛を踏みつける足を離した。
「終わったところで次の試合の作戦会議でもしましょうか。早く終わらせて自由時間にしようよ」
そこで間を計ったかのようにキャプテンの生徒が全員をユルい感じにまとめて会議に移る。