香港国際学園〜第二部〜二章 30
地獄の奥底から這い出す亡者が如き叫び。
そして本来なら全裸のシルエットに重ねて花とかリボンとかハートとかの演出に代わり…イモリの黒焼きが、鶏の血が、腹を裂かれた子羊が…少女の体を取り巻き、本来の姿を形成してゆく…。
「C組の魔女!アイドル堕天使ようこそ妖子!!(本名山田妖子)」
…きゃぴるーん…
アダルトタッチになぁれ〜…を通り越して、相変わらず、少なくとも女子高生には見えないその姿どの辺が『きゃぴるーん』なのか、疑問点は山ほどあるが…。
常日頃若手芸人ムード漂う金大地、唯一の黒歴史が発掘された感じだ。
一応目撃(誠二や倶利伽羅との遣り取り直前)していた刀機は問題あるまい、とスルーしていた物の…教室まで(スライム化して)ついてくるとは思わなんだ。
「何の用だ、トレードや引き抜きには応じんぞ?それともスパイの真似事か?」
前兆を悟りながら(面白そうだから)見逃していた刀機、あくまで冷静…そして威圧的に(自分の落ち度はスルーして)応じる…。
「ただの義理返しよ…ウケケケケケ。」
大地を除いてこのクラスに、彼女やC組にそんな義理を作っている者なぞ居ないはずだが…?
いつもならこの手の胡散臭い相手には真っ先に食ってかかる兵器商の社長令嬢、綾瀬雪菜がやけに大人しいのも気になる。
「あの吸血鬼『ドノ』の情報…」
何処か皮肉混じりに『ドノ』を強調した物言い…人間じゃない奴ら同士でも…色々と利害関係がある様だ。
「不思議とね…それこそ、いにしえの歴史伝承の中で…私たち『化け物を』倒せたのは、貴方達『ニンゲン』だけ…。」
何かと引っかかる部分もあったが、耳を傾ける一同。
「今の様子だと、アタシが口添えするまでもなく策はある様ね…だけど良い、ズバリ言うわよ?」
…と、占いタレントばりに烏丸をねめつける。
「ニンゲンは…どれだけ鍛えても、知恵をつけても、例え能力者でも…神や悪魔の強大さは得られない。」
「ファック?だから困ってんだろ!?」
「でもね…この世の成らざるモノドモがこの世に在る為には、山ほど弱点を抱えて…そして、忌み嫌われ、闇に隠れ、暗いさだめに…。」
「済まん『妖子』はん、言わんといてくれ。」