PiPi's World 投稿小説

俺が魔王?
官能リレー小説 - アブノーマル

の最初へ
 1
 3
の最後へ

俺が魔王? 3

怒りと悲しみを吹き払うように、彼らの声が廃墟の村に響く。
寂しげな風が吹き抜ける。彼らにはそれが村人の悲しみを運んできたように思われた。


これが、「魔王討滅に生涯を捧げた」と言われる魔王宿命のライバルであるアドルフ・フォン・リンデンバウムが戦いの場に上がった瞬間だった。

そして彼ら一同は決意を胸に、村を去っていった。




「ジルバ」
「はい」
俺と共に北へ飛ぶ道中、少し質問してみた。このジジイ、見た目は貴族に仕える執事、よく漫画などに登場するロマンスグレーの髪を丁寧に整えた品のいい老執事といった風情だ。喋らなければ。喋るとどことなく底知れない気がしなくもない。
「俺のこの体を選んだ理由は?」
「元老院で真に魔王様に相応しい体を選定いたしました。
 真に我ら魔族を率いるに足る智慧を持つ人物を。」
「なるほどな」
「しかし解せませぬ。元老院ともあろうものが人間を、それも単なる村人を選ぶなど…」
ジルバは俺の横で首をひねっている。
無理もない、今はただの村人、その前は普通の社会人。
しかも前世の記憶は欠落だらけの曖昧なもの。
智慧のちの字も無い凡人だ。
魔王の頃の記憶を思い出してみる。
あの頃の俺は実に勇敢だった。
剛勇無双だった。だが力に頼りすぎて頭の回らない漢だと思われていたのも知っている。だが今は違う。
「ふん。大方俺を傀儡にしようと思ったのであろうよ。」
それきり俺たちに会話はなく、暫く飛ぶ。
「おい、俺の村を通り過ぎたぞ。
 城はまだなのか」
かつて故郷だった場所を横目に、ジジイは進路を変えず飛び続ける。
「もう少し行った山中です。
 流石に村の跡地にそのまま建てては、防衛面で不安が残りますので」
はぁ…本当に邪魔だったから消されたんだな、俺の村。
もういいけどさ…
「見えましたぞ魔王様!
 アレが新たな我々の城ですぞ」
なんとなく感傷に浸っていると、ジジイが俺を呼ぶ。
示された方向を見ると、そこには白い白亜の城か建てられていた。
白氷城。それが俺の城の名前だそうだ。
名前の通りに氷のような凍てつく冷たい白さを見せるこの城で、これから俺は魔族を復興させて行くなのだ。
誰か、近づいてくる影が見える。俺と同じ、はるかな高みを飛ぶ影。ほんの胡麻粒のような小さな影がいくつか。
その影は少しずつ大きくなり、白氷城の城下町近くまで来たところで俺達と出会った。
「魔王様。」中で一番大きな者が声を放ってくる。
身長は2mほどか。筋骨隆々の豪傑風の魔族だ。基本的な姿形は俺やジルバと同じ、角とコウモリの様な羽根、そして尻尾を生やした以外は人間と同じ形。
「臣下を代表して、我らが迎えに上がりました。」
重々しいその声とともに、迎えに来た5名の魔族達が一斉に俺に礼をする。俺は記憶にある限りの魔族の幹部連中の顔と名前を思い浮かべる。
「皆揃っているのか。」
「魔王様亡き後、討たれました者も多うございます。」
見れば元老院議員の顔も二人見える。他は武将達だ。
「少なくなったな。」
「我ら一同、お待ちしておりました。さあ、魔王様を皆がお待ちしております。」
「うむ。」
俺はそれだけを言って眼下の城へ飛び込んだ。さて、どれだけ残っているのか。
……少ない。
記憶が確かになら武将だけで20名は居た筈だ。
それがよもや迎えに来た3人だけだと!?
その下の雑兵も百数十足らず、ピーク時は数千は居た筈なのに。
そして元老院の議員も、迎えに来なかった者を含めても半数以外とは…
見事に国家として死に体だ。
愕然としながらも全体を見回すと、一つ違和感に気が付く。
「おいジジイ、女が一人も居ないぞ
 いくら野郎が多いとは言えおかしいだろ?」
魔王様の帰還に女の一人も居ないのは変だろ?

SNSでこの小説を紹介

アブノーマルの他のリレー小説

こちらから小説を探す