一度の過ちから・・・ 25
写真を見ていくとやる夫がマスクの女とセックスしている写真もあった。
マスクの女とのときか?
いやこれは、確か寧々とセックスしてるところだったはず。
どうやって撮影したのか?
アングルからして、あのあたりから撮影されている。
「なんだ?」
やる夫は、化粧台の縁にカメラがあるのに気付いた。
取り外してメモリーカードを抜き取った。
すぐにノートパソコンに接続して中身を確認する。
振るえる手で最初のムービーをクリックした。
「田所くん、ちゃんと映ってる?」
「映ってますよ。でも今はその呼び方、許せませんね。」
「ごめんなさい、田所様。」
「そうそう、それでよし。もう少し低い位置の方がいいね。」
「このくらい?」
「うん。一旦ベットに寝そべってみて。」
「はい。」
寧々が、田所という男と会話しながらカメラの位置を決めている様子が映っていた。
メモリーに保存されている映像が、その男にも配信されているようで、
寧々がその男と会話しながら位置を調整していた。
「田所、…たどころ、…たどころさん、た…ろさん!」
やる夫の頭から血の気が引いていく。
田所といえば、寧々の会社の若手社員だったはずだ。
迂闊にもカメラを取り外してしまったことで、
隠し撮りに気付いたことが田所に知られるのも時間の問題だ。
このまま気づかなかった振りはできなくなった。
ショックのあまり判断力が失われていく。
タロさん、いや田所にメール書かなければ。
タロさん
改めまして田所さんへ
どうか妻を、寧々を返して貰えないでしょうか?
これまでのことは、全てなかったことにして、
何とか寧々を返して頂きたいのです。
身勝手なお願いなのは重々承知していますが、是非ともお願いします。
やる夫
書き終えたものの、やる夫は送信できなかった。
今まで、場当たり的に判断して失敗してきた。
今回は絶対に失敗できない。
「よく考えろやる夫。」
自分に言い聞かせる。
明日、寧々の職場に行って自分の目で確かめてから話し合えばいい。
意気地のないやる夫は、自分に都合の良い考えに流されていった。
*** 身心の乖離 ***
妻の職場前まで行っても、確かめに乗り込んでいけなかった。
やる夫は一週間出勤もせず自宅に籠った。
初めて家のチャイムを鳴らしたのは妻ではなくめぐみさんだった。
「やる夫さん一週間も仕事休んでどうしちゃったの?」
インターホン越しに問いかけられた。
家の鍵は空けたままだったせいで、めぐみさんは部屋まで上がりこんできた。
「一応わたしの方で誤魔化しておいたから欠勤にはなってないわよ。」
「そっか、ありがとう。」
「お腹すいてない?何か作ろうか?」
そういって彼女は台所に立った。
妻以上に甲斐甲斐しく振舞うめぐみさんに食欲も満たされれ気が紛れていった。
彼女は当然のように性欲も満たしてくれた。
寂しさを紛らせてくれる彼女に体を預けた。
妻の心を取り戻したい気持ちが薄らいでいく。
心と体が分離されていくような妙な感覚に陥った。
めぐみさんに食欲と性欲を与えられ続けるうちに
もうこの女性(ひと)と一緒になって穏やかに暮らしてもいいと思えた。
「明日会社でしてあげるから、絶対出勤してね。」
彼女は精子を子宮で受け止めた後に言った。
それでも出社する気になれなかった。
それを察した彼女は帰宅を諦め泊まり込むつもりらしい。
彼女は後戯も愉しませてくれた。
僕はいつのまにか眠っていた。
翌朝、彼女が開けたであろうカーテンのせいで日差しが差し込んで目が覚めた。
股間に生暖かいものを感じて目を向けると
彼女がフェラしているところだった。
半起ち状態のちんぽを掌で受け止めハーモニカでも吹くように舐めている。
「おはよう。」
舐めながらくぐもった声で微笑みかけてくる。
「わかった。行くよ。」
「逝っちゃダメ。」
一瞬話は噛み合わなかった。
目が合った瞬間、二人で笑った。