「はい、落ち着きなさい」
「お、おおおお、おう」
まだ動揺している。イケメンが台無しだ。

「私ばかり個人情報を知られて不公平です。まずあなた、お名前は？それと年齢、ご職業を」

「え、ええと、秋村透（あきむら・とおる）です……19歳。大学1年生、です…」
「ああ、やっぱり学生さん」
「は、はい」

「じゃあ私も改めて。沢渡燐。24歳……あ、来月で25になるれっきとした成人女性です」


「や、やっぱり、年上、なんですね…」
「はい」

外からのお客様や取引先の人が私を見ると「小学生か中学生が職場体験をしている」ように見られるらしい。もう慣れ切ったことである。

「いい車乗ってますね。自分で買われたんですか」
「い、いえ……パｐ……いや、父が…」
………このロリコンイケメン、いいとこのボンボンなんだろう。今一瞬パパって呼びそうになったのはスルーしとこう。にしても黒のハイエースとかあからさま過ぎる。

イケメンなのに……私は言う。
「とりあえず、シャワーしたいから……実家暮らしじゃないよね？」
頷く透……うんやはりね。名字を知って私は思う、警察沙汰になったら被害者でも面倒臭い……しかも今の職場では透の父親を初めとする一族がガッツリ絡んでいるので尚更、バレると週刊誌のネタになる。


数時間後、私はシャワーを終えた……汚れた下着やら衣類は洗濯と乾燥で問題は無い、ここは透のマンションである……。
「……第二次性徴身体発育不良症って知っている？」
透は首を横に振る、無理もない最近になって判明した遺伝子病であり多くが身長が小学生から変わらない、生理もあるし妊娠も出来るがこの身長故に色々と不都合が生じてはいる。障害者と認定するかで永田町の狸らが騒いでいる。
「透君がロリコンになった理由……同年代の女性不信かしら？」
図星らしく透の表情は冴えない、恐らく同世代の女性と絡んで碌な事になってないのが重なったのだろう。
「私としては処女喪失は深刻に考えてないから」
「……あ、のその」
「見ての通り、私は恋愛はしてないの……だから先程まで処女だった。バレたら困るのは貴方や両親だけじゃない……だから恋人になってあげる」
「はい？」
透はびっくりして表情が固まるが私が言う。
「結婚を前提にせずにね……」
居間に置かれたＢＤとＤＶＤはアニメ、しかも幼女が好む作品ばかり。この分だと危ない……身内の不祥事で会社が傾くのも不思議じゃない、自分が導火線になるのはごめんである。

「ど、どどどどどうしてっっ」
「落ち着きなさい。私は、あなたに犯されたことを警察沙汰にはしません。あなたも自首する必要はありません。ただし、別の意味で責任は取ってもらいます、ってことでね」
「は、はひ」
声が上ずっている。本当に大丈夫かねこの人は。

外は夕暮れ。私は一日中彼に振り回されていたことになる。明日から仕事なんだけど、これじゃ行けないな。ただでさえ人手が足りないしブラックなとこの社畜だと、私も未来がない。