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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 98

ラモーヌは後方を3馬身差広げて堂々の勝利。
トライアルでもその強さを見せつけた。
離された2着争いだが、チュウオーサリーが脅威の粘り腰でダイナフェアリーを差し返して際どい勝負までもっていった。

「ホントに凄い馬だね」
「乗ってて楽しいですよ」

チュウオーサリー鞍上の南が澪に声をかける。

そんな風に春シーズンを幸先良く迎えた樹里だったが、次の週に大きなアクシデントに見舞われる。
ウィンドフォールが出走予定のスプリングステークスが季節外れの降雪によって次週に繰り越しになったのだ。
と言う事は、ドバイミーティングと同じ週に行われる事となった訳であった。

故に急に乗り手がいなくなったウィンドフォール。
澪はドバイ行きが決定していたからだ。

そんな悩む奥原の前に、通りがかった若い騎手がいた。

「丁度良い所に居たな、善仁」

柴原善仁・・・
叔父は関東のトップジョッキー、柴原政仁。
そんな叔父を持つ彼は、デビュー2年目。
丁度競馬学校の一期生となる。

「いい機会だ、ウチの馬に乗りなよ」
「えっ?!いいんですかっ?!」

叔父に似た丸っこい鼻の善仁が無邪気に小躍りする背中を見ながら、愛美が奥原に小声で聞く。

「いいんですか?」
「相原が乗れないんだし、ウィンドフォールにも良い刺激になるさ」

やや心配顔の愛美に奥原はそう言って笑うのだった。


ウィンドフォールの急遽の乗り変わりも心配ではあったが、樹里一行は無事ドバイに到着し調整も順調に行っていた。

「環境の変化にも対応してるのか、あるいはただのんびりしてるだけなのか」

シロノライデンはいつも通り。
香港で遠征経験のあるスターライトブルーもどっしりと構えている。
若干フルダブルガーベラが到着直後はイライラしていたくらいだ。

そのUAEダービー。
一番人気は快速逃亡者スノーチーフ。
アメリカ2歳G 1勝ちのあるこの馬が実績、人気でトップだった。
フルダブルガーベラは6番人気。
こちらでは知名度の低い日本の馬としては大健闘と言える。

「潜在能力からすれば奴だな」
「流石ユーシだな、俺もそうだ」

今回祐志とヘンリーを伴ってドバイに来たが、その2人が注目したのはアメリカの重賞未勝利馬・・・
ファーディナンドだった。

「フルダブルガーベラはどうかしら?」
「いい勝負だと思うな」

樹里が聞くとヘンリーが答える。
その言葉にホッとする樹里。

そして、5番人気は香港の牝馬アバディーン。
ブラウンウッド厩舎の馬で騎手はシャロンだった。

シャロンと澪は会ってすぐに打ち解けていた。
在地、遠征ジョッキー合わせても彼女達だけが女であったのも大きい。
しかもブラウンウッド厩舎も全て同じレースに管理馬を登録していたのだ。

レースでは敵同士になってしまうが、コース調整やクールダウンは一緒に行っており、澪は気難しい馬の扱い方をシャロンからいろいろアドバイスをもらってそれを実践していた。
そのおかげか、フルダブルガーベラはドバイに着いた当初はややカリカリしていたものの次第に落ち着いて厩舎に滞在できるようになっていた。

「シャロンさんはホントに凄いですよ」
「馬も人も学ぶところは多いよね」

澪と寛子はそんな会話を交わしていた。

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