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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 97

涼風ファームでは、エリック達がそんな事を言い合っていた。
彼らとしてはシンボリルドルフの馬体がヨーロッパ向きと見ていたので、この選択が理解出来なかったのがある。
それだけでなく、オーナーがかなり無理をしている雰囲気を感じていたのだ。


そして季節は進み3月になる。
母馬達もそろそろ出産のシーズンに入る所だ。

今年はアキネバー、セントオーキッド、キタヨシコの3頭が受胎。
お腹も大きく膨らみ、いよいよと言った所。

ガリガリに痩せてしまっていたシャダイソフィアは脚の状況も良くなり、食欲が戻りつつあった。
餌もペースト状のものからカイバにシフトできるようになり、何とか命は取り留めたと言えるまでにはなった。
だが、衰えた身体が回復して放牧させれるまでにはまだ時間を要するだろう。

もう一頭の心配の種、サクは温水治療とプール調教が上手くいき、トラックでの調教を開始できるようになった。
ただこれも、まだ軽めと言った感じだった。

そんな3月半ばにフィリーズレビューがある。
リュウノラモーヌの久々の出走だった。

十分な休養を取っての出走となる。
これまではマイルを使われてきたラモーヌだが、今回は1ハロン短い1400。
陣営としては全く問題ない、としている。

関西の桜花賞トライアルながら人気上位は関東馬。
2歳女王ラモーヌにその2着馬ダイナフェアリー、さらに年明けのフェアリーステークスを逃げ切った快速馬チュウオーサリーの3頭。
そこにポットテスコレディが加わり4強の様相を醸し出していた。

奥原からの指示は、先を見据えた競馬をして欲しいとの一言だった。
賢い馬だからどんなレースでも対応するだろうが、オークスの距離を見据えたレースを求めているのだろう。

ラモーヌに跨る澪は堂々としたものだ。
年明けから勝ち星も順調に築き上げ、現在関西リーディングで2位。
アイドルから実力派に脱皮を遂げている途上だった。
これだけの馬を任されても不相応と言う言葉もかなり減っては来ている。

(暫く見ない内に成長してるのよね)

ラモーヌを引く愛美も澪の堂々とした様に感心していた。
澪が乗ると馬がその気になりながらも、ヒートアップし過ぎない。
無論、馬が賢いのもあるが、澪が上手く闘志をコントロールしているのも大きい。

「本当に、賢くて助かります」
「いやいや、手を焼かせる部分もある子だから凄いよ」

本馬場に向かう地下馬道でそう謙遜する澪に愛美も返す。
人相手には従順だが、馬相手には生来の気の強さを目一杯出すタイプで、愛美もそれで振り回された事もある。

今回は内枠に入ったこともあり、レースの運び方もポイントになる。

スタートは普通に出る。
ただ外側から寄られてしまい好位置を取れない。
馬群の真ん中、内埒に近い位置を走らされる。
外枠からチュウオーサリーが好スタートを決め先頭に立つ。
ポットテスコレディは好位5番手あたり。
ダイナフェアリーの鞍上・増川はラモーヌの外にぴったりついてマークする形をとった。

マークされるのは当然の立場・・・
そう言う意味ではタフなレースになると思っていた。
澪は少しラモーヌを抑えて位置取りを下げる。
先頭が快調に引っ張る中、ラモーヌは後方集団からの競馬になった。

先頭が快調に飛ばしていく。
ラモーヌはズルズルと後方3番手まで下げ3コーナーに入る。
その辺りから先頭集団が動き始め、4コーナーではチュウオーサリーにダイナフェアリーが迫る勢いで最後の直線に入る。

直線の上り坂に入り、ダイナフェアリーが交わして先頭に立つ。
ソツの無い競馬で先頭に立つと後続を引き離していく。
しっかりした手応えに増川の頬も緩む。

だが・・・
大外から飛んできたものがあった。

それはまさしく飛ぶとしか表現できないものだった。
漆黒の馬体が低い体勢のままターフの上を跳び、周囲の時間を止めたように他馬をぶっちぎる。

そして・・・
一瞬でダイナフェアリーが交わされる。
増川も何が起こったか理解できない速度で抜き去った黒い馬体がそのまま差を広げる。

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