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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 96

スムーズに見えて真面目過ぎる悪いところが出ていた。
やはりと言うか、中盤で掛かって先頭に躍り出る。

そのままコーナーを回って先頭を走るが、直線に入り3頭に交わされてしまう。
だが、何度か一頭競り落として3着・・・
新馬戦とすればまあよくやった方だろう。

「これからの馬なので、長い目で見守ってやってください」

レース後に樹里に言った仁藤の言葉が全てだった。
競馬と言うのは、全て上手く行くばかりではないと言う事だった。


そんな一月の末。
樹里に電話があった。
それは海外から・・・
相手はセシリーだった。

「セシリーさん!その節はお世話になりました!」
「こちらこそ・・・今日はあなたにドバイをお薦めしようと思って」
「それって・・・」
「春にドバイでビッグレースがあるのよ!」

ドバイとはUAEにあるアラブの王族の潤沢な資金を注ぎ込んだ新興都市で、大馬主でもある彼らは砂漠に競馬場まで作り上げていた。
その競馬場・・・
ナド・アルシバで3月下旬にドバイミーティングと呼ばれる大レースがある。

今年開設されたばかりのナド・アルシバ競馬場を盛り上げる為にG 1レースをまとめて開催すると言うのがこのドバイミーティングであった。

「スターライトブルーなら、きっと良いレースになると思うわ」
「ええ、ありがとう・・・前向きに考えてみるわ」

その電話の後、樹里は急いでUAEの情報を集める。
幸い、本業の方の住宅建設関係でUAEとは付き合いがあったので、情報関係は簡単に集まった。
向こうも出走馬をアメリカやヨーロッパから募っている途上だった事もあり、登録の障害も無いようだった。

その資料を元に仁藤と会う。
仁藤は流石にアラブと聞いてビックリはするが、アラブの大金持ちが馬主な事も知っている為に納得はできた。

「もし行くなら、スターライトブルーだけでなく、帯同馬としてシロノライデンとフルダブルガーベラも連れて行きましょう」

馬は集団で居る方が安心する生き物だ。
香港の場合、受け入れ体制も整っていたからいいが、ドバイは長距離な上に受け入れ体制も分からない。
なら、帯同馬をつけて、それらもレースさせてみようと言うのが仁藤の考えだった。

スターライトブルーには芝1800mのドバイターフ。
シロノライデンには芝2400mのドバイシーマクラシック。
フルダブルガーベラには3歳ダート1800mのUAEダービー。

ちょうど日本では高松宮記念が行われる週であり、澪に先約があれば再度シャロンに依頼する形となる。

「セシリーの厩舎にも見込みがありそうなのがいるからいいチームができるかもしれないな」

ドバイ遠征の話を聞いた祐志がそう言う。

ブラウンウッド厩舎も馬を出してくるならある意味ライバルであるが心強い。
ますます春が楽しみになってきたのだ。

そんな仁藤厩舎の馬達も次走が決まる中、奥原厩舎期待の2頭も次走を決めていた。
リュウノラモーヌはフィリーズレビュー、ウィンドフォールはスプリングステークスと、それぞれクラシックのステップレースからの始動となる事が決まった。
電話でどちらも期待して下さいと言う奥原の声は期待に弾んでいた。


そんな中、皇帝シンボリルドルフの海外遠征が発表された。
周囲の予想とは大きく違い、ヨーロッパでは無かった。
ましてやドバイでもない。
アメリカへの遠征だった。

しかも半ば転厩と言う形でシンボリルドルフをアメリカ現地の厩舎で調教してレースに出走させると言う事で、様々な憶測を招いてしまっていた。
これは厩舎とオーナーの対立だ・・・
また同じ事を・・・
そんな意見が出るのは当然。
それは一年前のシリウスシンボリ事件を思い出させる話だったからだ。

「あんなことをやっていては、勝てるレースも勝てんぞ」

エリックはシンボリルドルフを巡る騒動の話を聞いてバッサリと切り捨てた。

「そもそもなぜアメリカなんだ」
「噂に聞くとレベルの低いレースでまず勝って自信を付けさせるだとか…」
「ドバイに行かないのはジュリたちに対する当てつけだろ」

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