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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 93

最後方のシロノライデンはジャパンカップの時と比べて付いていけないと言う感じではない。
ゆったりと内側を機嫌良く走っている感じがする。
ギャロップダイナの意外な逃げはあるが、専任の逃げでないのでペースはそこまで早くない。
バックストレッチまで淡々とレースは流れて行った。

このやや遅めのペースだから、澪はルドルフが早めに動くと見ていた。
それは恐らく全ての騎手がそう読んでいたし、ギャロップダイナの逃げもそれを読んでなのだろう。
つまり澪も普段より早く動く必要があった。

その予想通り、3コーナー入ってすぐにシンボリルドルフが動く。
スッと先頭に並びかける。
それに合わせて後続も先頭へと迫っていく。
澪も少しシロノライデンを追って追走する。

このままルドルフは押し切るつもりだろうし、脚は充分持つだろう。
それを分かっているから後続もルドルフを追うが、それこそがルドルフの思う壺だった。
ただその中でも抜群の手応えの馬がいた。
ミホシンザンだ。

ルドルフは4コーナーで先頭に立った。
後方でいち早くまくっていったのはスダホークだが、その外から先行各馬を一気に交わしていったのがミホシンザンだ。

シロノライデンもついて行こうとはしたがタイミングが一歩遅れた。
ミホシンザンと同じように追っていったが先の2頭とは差が開く。

直線、押し切りを図るルドルフ。
外から追いかけるミホシンザン。
スターホース同士の一騎打ちだ。

だが・・・
追い縋るミホシンザンをルドルフは突き放す。
グングンと加速し置いていき、差が広がっていく。

ルドルフがゴールした時は、4馬身もの差。
全くの完勝であったのだ。

シロノライデンも直線で猛追し、ミホシンザンに迫る3着。
ジャパンカップのショックを払拭する走りだったのだ。


年が明けて樹里が涼風ファームにやってきたのは一月半ばになってからだった。
それは真奈達の出産があった為で、全員の出産が終わった所でやってきたのだ。

「やっぱり・・・外国産種牡馬は凄いですわ」

雪深い牧場を樹里を伴って歩く幸子が、何処かで聞いたような事を言うので樹里も笑ってしまう。
勿論、ここで言う外国産種牡馬はエリック達である。
と言うのも、生まれた子供全てが男の子。
今まで女の子しか産んでいない彼女達にとって初めての男の子が全て重なったからそんな話なのであった。

一番早い出産で産後暫く経った幸子が、そんな話をしながら樹里と共に向かったのは・・・
秋から建設していた施設だ。

馬用の温水プールと風呂施設。
休養馬厩舎の隣に突貫で建てられた施設だった。

中に入ると、湿気た熱気。
運動用の周回プールと療養用の湯船に別れる水槽の湯船の方に痩せ衰えた馬が浸かっていた。

痩せて骨が浮き上がったシャダイソフィア・・・
温かな風呂に少し生気が戻った目をしていた。
そのシャダイソフィアを挟むように、裸のヘンリーと敦子が一緒に浸かりながらマッサージをしていた。

「こんな施設だったんですね・・・」

言われるままに金だけ出した樹里。
どう言う施設か分からなかったが、完成したものを見て目を丸くしていた。

「一応、歩くぐらいはできるようになりましたから・・・ここから療養ですね」

シャダイソフィアは第一段階を生き抜いた事で、次のフェイズに入れた訳だ。
そう言った幸子が裸になる。
出産を終えたばかりなのに、また綺麗になったように感じて樹里も見惚れるぐらいの裸体だった。
そして、入れ替わるようにヘンリーが上がってきた。

「命はとりあえず助かった・・・だが、繁殖牝馬として使える可能性は限りなく低いし、長い年月がかかるだろうな」

まだ第一歩すら踏み出せていない。
シャダイソフィアの痩せた馬体を見ながらヘンリーは言い、樹里は静かに頷く。
幸い出されたエサは食べてくれる。
あとは馬体も回復してくれれば。
縋る思いだ。

「ミスター吉野がジュリに譲ってくれた馬はいたって順調だ。早い時期から動けそうだしなかなかやってくれそうな雰囲気がある」

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