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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 92

すでに来年の海外遠征計画を打ち立て、陣営が国内ラストランを宣言しているシンボリルドルフ。
そのルドルフに対し世代交代をもくろむ今年のクラシック2冠馬・ミホシンザン。

シロノライデンも体勢を立て直して直前の追い切りでは復調気配がうかがえていた。
当日の中山の天気は曇り、もしかしたら小雨交じり。
「道悪にさえならなければいい」
仁藤はそう言って祈るような気持ち。

上半期のグランプリホースながら、前走ジャパンカップの大敗のせいか単勝は6番人気。
樹里は紗英とともに観戦だが、

「ギャロップダイナやスダホークが人気で上なのはわかるけどさ、ハーバークラウンって誰?」
「一応菊花賞でライデンと一緒に走ってるね。まあライデンが先着してるけど」

実際、出走しない馬が多かったから出れた感があるハーバークラウンだが、調子だけは良いらしい。
ただこう言う馬はもっと人気薄だとたまに穴を空けるタイプだ。

2番人気は順当にミホシンザン。
シンボリルドルフの相手になるのはこの馬と言うのが大方の見方だろう。

馬主席では後から来た大和田が睨んで向こうに行く。

「感じ悪い・・・」
「仕方ないわよ」

樹里も苦笑するしかないが理由は分かっている。
大和田はスターライトブルーの香港での勝利と小さな新聞記事に大激怒だったらしい。
そこに書いていた『日本馬初の海外G1制覇』と言う文字が激怒させたようだ。
それは大和田がシンボリルドルフで成し遂げる筈の偉業だと思っていたかららしい。

馬主や調教師の反応は戦前より良くなったものの、まだ保守的な者も多いし、香港の価値を大きく見ていない人達もいる。
その中には大和田に同調してる者も多いが、中には賞賛してくれる馬主達もいる。

吉野やサクラグループの金などは、樹里との関係もあって直接祝福してくれたりした。

彼らは4兄弟や祐志が作ってくれた縁で友好的な関係を築けることができた。
そこから生まれた関係も多い。

シロノライデンはジャパンカップの敗戦から陣営がケアに乗り出し、体調面も回復傾向にあった。
パドックの歩き方もきびきびしている。
澪が跨ると、リラックスした雰囲気から戦闘モードに入る。

(今日はいい感じだね)

地下馬道から軽快な動きで本馬場に駆けていく。

澪が合図をすると、シロノライデンは軽快に駆ける。
あのジャパンカップの重さが無いのは、馬場が重くなってないせいだろう。
幸いな事に滑る感じも無かった。

返し馬を終えて待避場に行く。
周囲の馬の様子に目を配りながら澪は今年一年を振り返る。
澪にとっては飛躍の年だった。
G1初勝利だけでなく、リーディング争いでも6位まで来た。
もう勢いだけならトップジョッキーと同じで、他の厩舎からも有力馬の騎乗依頼が来るようになってきたぐらいだ。
確実にだが、アイドルから実力派に脱皮してる感がある・・・
そんな事を実感できる一年だったのだ。

そうなれたのも、間違いなくこのシロノライデンのお陰だ。
この馬に育てて貰ったと言う実感はある。
来年も現役続行を決めているシロノライデンだが、今年最後のレースはその感謝を込めたいと思って乗っていた。

相手は強い。
シンボリルドルフとミホシンザン。
だが、勝負できない訳では無い。

10頭立て、4枠4番シロノライデン。
スムーズに枠入りし、ゲートも問題なく出る。

ギャロップダイナが逃げの手を打つ。それに競っていくカネクロシオ。
シンボリルドルフはちょうど真ん中のポジション。
シロノライデンはいつも通り後方。
ミホシンザン、スダホーク、ハーバークラウンらと仲良く並んでルドルフの様子をうかがう。

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