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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 10

この時、真奈はモガミを種付け相手に選んだ父の言葉を思い出していた。

『人も競走馬も欠点が長所となり得る事もあるんだよ』

真奈の父、慎太郎は馬の話になると、常に嬉しそうだった。
と言うか、馬の事以外一切興味の無い人だった。
よい夫、良い父であったかと言えば全くそう思わない。
結婚記念日も忘れた。
娘の誕生日も忘れてる。
妻や娘の事なんかお構いなしで、家の事も興味無し。
旅行や外食、お出かけなんてイベントは一切無かった。
兎に角、馬、馬、馬なのである。
だが馬産家としては尊敬できる人だった。
その情熱も決して真似できないし、馬を語る慎太郎は娘から見ても格好良かった。
ある意味夫に選ぶような人ではないが、何となく母が惚れたのも分かる気がする。

「ママはどう思う?」
「そうね・・・どちらとも抱かれてみたい男かしら」

思わず笑ってしまうが、母のそんな選択は嫌いでない。
父の理論と母の女の勘を合わせてみると上手くいくんじゃないかと真奈は思っていたが、父と違い女である真奈には母の言う意味が分かる。
人間に例えれば、確かにディクタスもリアルシャダイも抱かれてみたい男ではある。

あんまり暴力的過ぎると困るが気性の激しい男も良し。
のんびり穏やかな平和主義者もまた良し。
人間の男が一人一人性格が違うように、種牡馬にも一頭一頭個性がある。

競走馬は同じ母馬から生まれた仔がきょうだいになる。
たとえ父親が違ったとしてもだ。

モガミ産駒の牝馬に奈帆が近寄り、鼻面を優しく撫でる。
その姿を3人が眺めていた。

「あの仔は奈帆ちゃんのお気に入りなんですね」
「馬の方が奈帆を気に入ったのかもしれませんね」

目を細めてその様子を見る樹里と真奈。

そして、その後に改めてだが従業員の紹介をして貰った。
この規模の牧場は殆ど家族経営の為に従業員は雇っていても極少数だ。
従って、涼風ファームに3人の従業員は現状過度なぐらいだ。
だが、今後広げていくつもりなら特に問題無いが、その3人に掛かる経費が必要以上に多い気がして、樹里はその点が気になっていたのだ。

その疑問はすぐに分かった。
3人の従業員はいずれもシングルマザーだったのだ。
これには理由があって、ワーカーホリックかつ馬にしか興味の無い慎太郎の元では従業員が長続きせず、行き場の無いシングルマザーだけが残ったと言う事らしい。
そして、幸子が彼女達に同情的で、子供達にかかる経費も全て負担していたので経費が嵩んだ訳だ。

予想外の事だったが、樹里としては逆にこれで良かったと思う所があった。
彼女達は幸子や真奈に強く恩義を感じてる様子だったからだ。

そのうちの一人、梶浦敦子は樹里と同い年で、且つ娘まで同い年という偶然だった。

「牧場自体の経営も苦しいのに私たちの面倒まで見てもらって…感謝しかないんです」
敦子たち3人の従業員も幸子と真奈が自らの身体を犠牲にしていたのもわかっていたという。
それはいずれ自分たちにも向くのでは、という不安も抱えて。

「うちの子もそう言う不安を持ってましたから」
もう一人、新田裕美の娘は奈帆と同い年。

「皆さんの頑張りが無かったらこの牧場もなかったと思います。今後も皆さんと一緒にやっていく、という気持ちは変わりません」

そう言いながら、3人目の従業員を樹里は見る。
彼女は一際若い。
確かに若いのだが、大人の身体付きをしながらも表情は若いを通り越して幼く見える。
化粧を殆どしてないからかもしれないが、それにしても童顔とかそう言うのとは全く違う異質な感じだ。

「百合ちゃん、オーナーにご挨拶して」
「はいっ!倉崎百合ですっ!よろしくお願いしますっ!」

喋り方や、ペコリと頭を下げる様子からしても、どこか違和感を感じる。
多分それを察したのか、幸子が補足する。

「彼女は・・・知的障害があって・・・」
「成る程」

納得できた。
確かに違和感はこれだったんだろう。

百合はこの中で最年少の21歳。
だが、最年長の裕美の3人や敦子の2人より多い5人の子持ち。
しかも、その5人全てが父親違いであった。

それだけで想像できた。
つまり精神は幼いが肉体はグラマラスな彼女を男達が欲望の捌け口に使ったと言う事だろう。
2年前に裸のまま放置された彼女を真奈が発見して保護したのがここに居る経緯だった。
その時彼女は妊娠していたにも関わらず、男に犯されていた形跡があった。

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