PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 9
 11
の最後へ

駆ける馬 11

しかも彼女は男達が欲望のままに蹂躙していく事すら『可愛がられている』と思っていたらしい。
確かに行為そのものは気持ちいい訳だから、幼い精神だとそう感じたのかもしれない。
保護した真奈達が聞いてみたら、誰かれ構わず股を開けば気持ちよくしてくれると思っている様子で、余りにも不憫だから保護したのだと言う。

「そして、今は彼女の子供達も引き取れて、一緒に暮らしてるのです」
「そうですか・・・負担にはなってないですか?」
「いえ・・・彼女は馴致が凄く上手いんです!」

精神的に幼い故に育てられなかった子供達は保護施設に居た。
彼女もそこで保護されていたのだが、ちょっとした事で男についていきそのままヤラれると言うパターンだったようだ。
そんな事もあって真奈達も気をつけていたが、馬との関わりが彼女を変えていったようだ。

特に子馬達との関わり・・・
馬に人を乗せると言う事を教える馴致を彼女がすると、ベテランの筈の幸子や裕美より遥かに上手かったのだ。
いやむしろ、神がかり的に上手く、気性の荒い子すら百合かかると大人しく馴致されてしまっていた。

「となると、あの仔もそうだったりするんですか?」
「ええ、もちろんです」

向こうの放牧地でのんびり歩きまわるモガミ産駒の牝馬を見て樹里が尋ねると、幸子が頷く。
気性難の仔が多いと聞くモガミの仔があそこまで大人しくなるのだから、百合の天性の才能というのはおそろしい。

「おおっとっ?」
放牧地の柵にもたれかかる樹里にかまってくるのはもう一頭の幼駒。
ファバージ産駒の1歳牡馬。

「はい、いい子いい子」
その仔馬を百合が落ち着かせて、鼻面を優しく撫でる。

すると、子馬が百合に鼻を擦り付けて甘えてくるのだ。

「本当に凄いんですね」

大人びた容姿とはかけ離れた無邪気な笑顔の百合。
障碍のハンデもあるのだろうが、この穏やかさはきっと居場所を見つけたのだからと樹里は思った。
故に、涼風ファームはやっていけるだろうと。


そんな思いで涼風ファームを後にした樹里。
移動中も競馬の事をよく考えるようになった。

この前行われた天皇賞春では偉大なる兄と比べられ愚弟とまで呼ばれたモンテファストが戴冠。
スタミナの権化シーホークの力をまざまざと見せつけた。

今週行われる3歳マイルの頂点を決めるNHKマイルカップは、皐月賞2着のビゼンニシキが堂々の大本命。
皐月賞の時の二強ムードとは違い、ここは完全に一強模様だ。

そしてその次のヴィクトリアマイルでは、本命候補ダイナカールが回避。
快速馬ダスゲニーと名門の良血シャダイソフィアの一騎討ちになりそうな雰囲気だ。

とりあえず現状、樹里の持ち馬では重賞すら出れていないのでG 1なんて相当先の話だった。

この前、新馬戦を勝ったシロノライデンだが、次走は東京遠征して3歳1勝クラスの特別戦に挑む予定と聞いた。
距離が2400mと長く、広いコースなので良いと言うのと、遠征に慣らしておきたいと言うのもあるようだ。
秋までには3勝もしくは本賞金1600万円でオープン昇格して神戸新聞杯が目標だと言う。
その辺りは仁藤先生にお任せなので樹里は応援するだけだ。

そしてスターライトブルーも入厩して調教が開始されている。
こちらは順調そのもので、8月にはデビューできるだろうと言う話だ。
この馬は、母馬のスイートライトが最後に産んだ子で、母馬の方は難産で命を落としている。
このスイートライトは亡き慎太郎が惚れ込んでかなりの借金してまで買ったにも関わらず若くして死んだのだ。
そのショックたるや大きく、慎太郎の寿命を確実に縮めたのは間違いない。

確かに慎太郎が惚れたのは分かるし、健三も相当気に入っていたみたいだ。
均整の取れた馬体は美しさすら感じる程であった。

パーソロン産駒にスピードシンボリ産駒の牝馬という配合は、日本ダービーでも大本命になっているシンボリルドルフと同じ。
血統が同じだから走る、そう簡単にいくわけはないと思いながらも、樹里は馬体を見ながら期待せずにはいられなかった。

すでに栗東に入厩して調教を積まれているスターライトブルーの様子を見に樹里がトレセンを訪ねると、彼の世話をしている同年代の女性を紹介される。

スターライトブルーの担当厩務員、濱松寛子。

「すごく走りそうな雰囲気がありますね」
「私も、ここまでオーラのある仔は初めてなんです」

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す