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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 90

何度も何度も絶頂しながら、樹里は幸せに意識を落としたのだ。


次の週の半ばには川崎競馬場で全日本2歳優駿がある。
フルダブルガーベラは出走して勝利。
2着に7馬身もぶっ千切る完勝であった。

そして週末は、朝日杯フューチュリティステークスがある。
人気はカツラギハイデン、ヤマニンファルコン、そしてウィンドフォール。
ウィンドフォールは遠征しての参戦とあって3番人気であったが、上位人気は拮抗していた。

リュウノラモーヌも調子が良かったが、ウィンドフォールの出来も抜群だった。
ホープフルステークスではなく、あえてここを狙ってきたのは遠征に慣れさせる為であった。
そしてあえて狙うだけあって、良い状態で仕上げてきていた。

(いい出来よね・・・)

元来神経質な馬だけに多少煩い所を見せる。
強烈にヒートアップしていないので、これぐらいなら許容範囲であるが不安材料ではある。
ただ神経質な分反応も良く、その辺りは澪も好きな所だ。

「今日はある意味敵になるけど、頑張って乗って来いよ」
「はい。勝ちに行きます」

パドックで仁藤が師匠なりのエールを送る。
澪もそれに応える。
仁藤厩舎からはハギノビジョウフが出走している。


レースはそのハギノビジョウフとエイシンガッツの先手争い。
ウィンドフォールは真ん中あたりのポジションで進む。
内から人気のカツラギハイデンと並ぶ形だ。

ウィンドフォールは楽に走っている印象だった。
実際、マイルではよく走ると澪も思っていたし、ファバージ産駒らしい軽快なスピードがある。

3コーナー4コーナーも中団待機。
直線に向いて馬群がバラけた所で澪が鞭を出しただけでグンと身体を沈み込ませて加速する。
神経質なのは欠点だが、逆にこう言う反応の良さと言う利点もあるのだ。

瞬く間に先頭に追いつき、あっと言う間に交わす。
そしてそのままグングンと加速し続ける。
一馬身後ろにカツラギハイデンが同じように加速しながら追走し、残り100m・・・
後続は2頭に置いていかれるが、カツラギハイデンとの差も徐々に開いていく。

ゴールした時は2馬身差・・・
だが、着差以上に強さを感じさせる勝利だったのだ。

これで樹里は牡牝で2歳G1を2つと交流重賞も制した事になる。
馬主2年目としては予想を上回る活躍であったのだ。


そんな樹里にも悩み事があった。
来年度の新馬である。

涼風ファームで産まれた来年度の新馬となる子馬は2頭いた。
だが、両方とも競走馬になるには厳しいと言う判断だった。

片方は体質が弱過ぎ、もう片方は競争能力が足りない。
エリック達が駄目だと言うぐらいだから、どうにもならないのだろう。
と言う事で、来年の新馬がゼロの状態なのだ。


そんな状況で朝日杯の後、吉野と涼風ファームで樹里は会った。
吉野はシャダイソフィアの様子を見に来ていて、樹里は幸子と敦子が男の子を産んだのでそれを見に来ていたのだ。

「シャダイソフィアの事、ありがとうございます」
「いえ、まだ予断を許しませんし」

ギブスは外せたシャダイソフィアだが消耗も激しく、エリックによると『気を抜けば死にかねん』状況だと言う。
一つの山場は越えたが、まだ予断は許せず4兄弟は交代で寝ずの番らしい。

「お礼と言って何ですが・・・来年の新馬を安価で融通させて貰えないですか?」
「いいのですか!」

吉野の申し出はエリック達から新馬がいない事を聞いたからかもしれない。

「勿論です・・・牧場に来て頂ければ、そこでお話ししましょう」
「ありがとうございます」

これは有難い縁だった。

2日後、樹里はエリックと真奈を伴って吉野の経営する牧場―社来ファームを訪れる。
日本の馬産地において最大規模を誇る広大な牧場に、樹里は初めて足を踏み入れた。

「噂には聞いていたが、素晴らしいところだな」
「ホントに」
エリックですら感嘆の声をあげる。

「ようこそ」
「こちらこそ、今回はありがとうございます」
「まだ買い手のついていない馬にはなりますが、気に入った子をぜひ見つけてもらえたら」

樹里と真奈の目についたのは、数頭いるノーザンテースト産駒とディクタス産駒。

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